4,RUNES
ついに最後のパーツが見つかったね。私はうれしいの、ヒルドルブ。さあ一緒に行きましょう。車椅子を走らせながら応接室へ向かう。
ドアを開けると一人の老人が座っていた。
「やっと会えたな、俺がリトゥナ・ヒルドールヴ。ここの社長だ」
車椅子の少女は言う。
「言葉遣いからおまえの品性がうかがい知れるな」
武蔵はいった。
「いいのか、おまえの命は我々が握っているんだ」
リトゥナが返す。
「そんなことが貴様に出来るのか?」
「確かにそうだな、でも俺が必要なのはおまえの知識だけなんだぜ」
「ふん、私の息子の命を奪っておいてその言いぐさとはな」
「御託はいいんだよ!さっさと俺を改造しろ!あの女、ルコとかいったか!おまえの妻のように、俺を改造しろ!」
リトゥナが怒鳴る。
「・・・貴様、これ以上私の家族を侮辱すると許さないぞ」
「ふふふふふ、ははははは。許さない?許さない?おまえの家族はアームヘッドだけだろ!ハハハ!・・・ゲフッ」
私は血を吐いた。
「お・・・、おい?」
武蔵がやや気を使うように見つめる。
「おまえがおもしろいから吐いちまったじゃねえか。ハハハ」
私は無理して笑い続ける。手で血をぬぐう。
「とにかく私には時間がないんだよ。おまえが俺を憎んでいるんだとしても。どうか私に夢を見させてくれ。リヴィングフィールドを完成させてくれ!」
私は彼に懇願するように言う。
「・・・」
彼は押し黙ったままだ。
「なんなら改造中に私を殺すがいいさ、おまえにはそれが出来るだろ?もうコレでいいんだ私の歩みはね、少しだけ考える時間をやる。総てが終わったら帰してやるよ」
27
私は金野 零子と彼女は紹介した。ほかに数人の”ラストワン”のメンバー。ニック・ジェリータ、ヤグニテ・ナポリーノ、サンドムーンバック・シェネロティカ、イブリー・ノックハックランド、羽渠 ラン、際田 礼と順々に名乗っていた。
それに対して”トゥ・チェンジ・ザ・ワールド”は悲惨だった、リーダーを喪い、指揮を喪い、士気を喪った。多くのメンバーが悲しみにうちひしがれている。
羽渠がルミナスに話しかけた。
「あんたが、ヘルのパイロットだって?」
「そうだけど?」
「どうしてあんなに切れが悪かったのよ、やっぱり菊田さんのせいなの?」
「・・・それもあるけどね、友達が引きこもっちゃったの、今回のことで」
フッと羽渠は笑った。
「サバイバルで生き残る方法って知っている?」
「え?」
「余計な心配の種を潰すことよ、そのこのところへ行きましょう。あいにく引きこもりなら経験者よ」
28
お気に入りの熊の人形を抱きながらベッド上で考え事をする生活を始めて何日たったのか?どうせなら時間が戻ればいいのにと宝生は思った。
ピンポーン、チャイムが鳴った。ユッキー?ユッキーは確か三日前に来てもうあってなかったっけ?ピンポーン、またチャイムが鳴る。もうしばらくしてもう一回チャイムが鳴る。ユッキーには3回目で出なかったら帰ってといってあるので無視していたら、もう一度、ピンポーン、チャイムが鳴った。ユッキーじゃない。とんでもない轟音が鳴ってドアが開いた。
「私の改造ガスガン”アマサワ”の威力はどうだ」
鍵穴は本来の役目を果たさなくなっていた。
「ごめんね?旬香ちゃん」
ルミナスが謝る。水色の髪をした見覚えのある人、ルミナスと髪を短く切った見覚えのない人がいた。
「おいヒッキー、ちょっと連れて行きたいところがある」
見覚えのない人が言った。
「え?」
「あっちをみな」
彼女は窓の外に指を指す。窓の外には赤いアームヘッド、リアルメシアだ。
「ユッキー?」
「こいつらはおまえを心配して連れに来たんだ、まったくうらやましいぜ」
彼女は言った。
29
「ほら、あのガキ、いけ好かないとは思ったけど、若いのにたいしたモンだと思わないか?」
羽渠は武蔵の孫、言左右衛門の息子の小次郎を指さす。
「今回の祖父の救出作戦のために村井さんに話をつけ、連合王国と御蓮政府の密約により連合王国は国内での作戦に目をつぶるそうです」
小次郎はきびきびと作戦について話している。
小次郎がこちらに目をつける。
「旬香さん、ルミナスさん、羽渠さん。ここにいたんですね。次の作戦のためにちょっと頼みたいことがあったんですよ」
「いったいなんなの?」
誰が言うことなく聞く。
「この作戦は施設への潜入を含むので敵の人間型ファントムを警戒する必要があります。そのためにこちらも人間型ファントムを用意します」
「人間型っていうと?ルーンズ?」
「そうです、ルーンズの協力を仰ぐためにラストワン、トゥ・チェンジ・ザ・ワールドの混成部隊を北御蓮に派遣します」
ちょっと間をおいて、羽渠のほうを見ていう。
「あなたが羽渠さん?すこし聞いていたのと違いますね」
「そうか?まああたしもここはいって少し変わったかもな」
羽渠はちょっと思案する。
30
北御蓮という地域は御蓮本国から赤道を挟んだ位置にあり現在春である御蓮に対し北御蓮は少し肌寒い秋であった。北御蓮が北海として御蓮の道として加わった後、アームコア採掘地として駆城という町が形成された。その海の近くの町のはずれにルーンズがいるらしいというのが小次郎の話だった。
菊田重工の輸送艦”桜衛”は駆城港に接岸し内部には数機のアームヘッドが搭載されていた。その中には新型アームヘッド”エッダロキ”が搭載されていた。スーは壊れたヘズに代わり用意されたそれを見ていた。
「なんで、今頃になって、スリーピィヘッドが動き出したの?」
黄盾というかつての同僚はまだ生きていて、私へのあこがれを憎しみに変えてまだ暗殺者を続けている。
「お悩みかい?ハニー」
砂のような髪、薄汚れたカウボーイハットにぼろくさいサングラス、ちょっと小さい身長、サンドムーンバック・シェネロティカだ。こいつはどうもうさんくさいと彼女は思っていた。
「なにかようなの?」
「俺がなんか相談に乗れることはないかなってさ、俺が聞いた守野屋 スーはもっといいパイロットだったんでな」
「余計なお世話だな」
シェネロティカはホルスターから二丁の銃を取り出し、スーに見せた。
「羽渠にもらったんだ、いいだろ」
「玩具の鉄砲か」
馬鹿にしたように言う。
「お、結構目利きいいのね、俺は最初全然分からなかったんだぜ、あいつ代わりに俺のアームヘッド寄こせとか意味のわかんないこといってたんだぜ。無茶いうなよ」
「もういいかな?」
スーは切り上げようとする。
「黄盾のことで悩んでいるのか?黒盾?」
シェネロティカの声色が変わる。
「なぜそれを?」
「こっちじゃ有名だぜ、暗殺王の失踪は」
「おまえ一体何者だ」
「ただの迷子のカウボーイさ」
シェネロティカは煙に巻く。
「そうだな、銃の腕を競わないか?勝ったら教えてやるよ」
彼は提案した。
「最初からその気だったでしょ」
「フッ」
31
「このアマサワとかいう銃使いにくいんですけど、威力はあるけどさあ」
よく言う、五本の空き缶のうち、四本に命中させたくせに。
スーは玩具の銃を構える。わかったどうやら、勘は鈍っていない。ねらいを定める。
32
「ヒュー、しびれるねえ」
全段命中のスーにシェネロティカは感心したようにいった。
「手を抜いたくせに、分かっているぞ」
「本領のあんたはやっぱちがうな、話してやるよ。」
シェネロティカが話を始めた。
「俺もかつては盾の候補だったんだよ。暗殺者だったんだ。でも俺がしたいのは命のやりとりだった。暗殺とは違う。だからね、俺はスリーピィヘッドの暗殺者を殺して回ったんだよ。だけど組織は最強の刺客を繰り出した、板利だよ。俺は辛くも逃れてここに付いたんだぜ」
「おまえもいかれてるんだな」
呆れたようにスーは言った。
「手厳しいぜ、だが奴はあんたがいなくなってから変わったぜ、奴は盾で一番の問題児だ。暗殺もより残虐趣味になり、相手を楽に殺すという発想もなくなった。あんたへの憎悪を相手にのせてるんだぜ。そいつに追われてた俺の気持ちも察してくれよ」
「私は今回、あいつとの決着をつける」
スーは意を決したように言った。
「がんばりな、スー」
シェネロティカは茶化すように励ました。
33
ルーンズ・ネストとして指定された場所は外から見れば洞穴にしか見えないが、中に入ってみれば人の手が入ってるような内装が広がっていた。中に入ったのは、山田、際田、スー、シェネロティカ、ルミナス、羽渠、木戸、イブリーの8人だった。ほかのメンバーは直接アプルーエに乗り込むための準備中だった。その8人が大広間のようなところに付いた。
「誰もいないな」
山田がつぶやいた。
「うふふふ、誰もいないって?おバカさんねえ」
どこから声が響く。歩く音が聞こえる。
「こんにちは、人間の皆様。私はルーン・エイワズ」
しゃれたワンピースを聞いた女の子が歩いてきた。
「ルーンズを見るのは、初めての方もいるみたいね?驚いてるのも無理ないわね。私たちは完璧ですもの」
「今居るのはきみだけなのかい」
イブリーが問う。
「今お姉様達はちょっとお引っ越し中なの、だからハガ姉ぐらいしかいないわ。あとはフェイとマンナズとカノが残っていたかしら」
「じゃあほかの四人はどこにいるんだい」
イブリーが再び問う。
「きれいな人間のお兄様、みんなは晩ご飯を用意しにいったわ」
エイワズは周りを見渡すと、満足そうに、
「驚きかしら?私たちは完璧だからお食事だって食べるのですよ」
「ど・・・どこに行ったのか分かるかい」
「何かお望みなのかしら?人間の皆様。私は協力しないわ。でも彼女たちがどこに行ったのか知りたいなら教えてあげる」
34
ルーン・ハガラズは北の方へ米を収穫しにいったらしい。ここが一番遠いな。そう思った山田はスルトに乗って向かうことにした。スルトには最新式のFASを積んでいて戦闘機動は無理でも、移動くらいは出来るようになっていた。
「私もあなたについて行きます」
際田の発言は意外だった。
「え、なんで?」
彼は思わず聞いてしまった。
「あなたは危なっかしいの、私が付いていないと不安だわ」
35
スルトの後ろをアウストリが飛行している。近くに田んぼがあるはずだ。しかしわざわざ米を収穫するなんて本格的だな。一体何を作るんだ?
アームコア反応を確認した。一体何の反応だ。ルーンズの反応は小さめでセンサーには引っかからないはず。アウストリも周囲を警戒している。
その正体が姿を現した。フェンリル?いやガルムだ。ここはファントムが野生化しているのか?
際田から通信が入る。
「タスケテ・・・」
「え?」
「私・・・犬苦手」
アウストリがスルトに寄り添う。ガルムは戦闘態勢を崩さない。ガルムが飛びかかる。スルトはアウストリをかばうようにして前に出る。ガルムがスルトの腕にかみつく。
「いい加減目をさませよ!スルト!」
山田は叫んだ。
36
なにが原因だろうか?FASか?山田の成長か?時間か?刺激か?スルトは再び覚醒した。スルトはガルムを振り払い炎の剣を構えた。
「やめて!」
別の声がする。いつの間にだろうか。一人の女の子がガルムの頭の上にいる。
「だめでしょ」
女の子はガルムの頭をこづいた。その瞬間がガルムが総ての足で膝をつき、倒れた。
「お騒がせしちゃってねー、ごめんねー。お兄さん、お姉さん。なんのようなの」
「きみがルーンズ?」
山田がたずねる。
「そうねー、私ねー。ハガラズ。よろしくねー」
37
「僕はランか、礼が一緒がよかったー。トゥチェンの子達ともお近づきになりたかったけど、よりによってハゲのおっさんかよ」
「悪かったな、イブリー」
木戸がにらむ。
「イブリーって呼んでイイのは僕が認めた子だけだよー。おっさんはだめー」
木戸は無視して進む。この辺に香辛料を取りに行ったのはフェイとかいうルーンズらしい。
「ルーン・エイワズって子も性格は悪そうだけど美人だったよね、おっさんはどう思う?」
「おっさんはやめろ、ノックハックランド」
木戸はもう一度にらむ。
「はいはい、怖い怖い」
38
木戸はイブリーに近づいた。
「おい木戸さん、近い近い。加齢臭がするよう」
「うるさい、ちょっと誰か付いてきてないか?」
木戸が耳打ちする。
「え?」
イブリーは周囲を目でおう。草むらが不自然にふるえる。
「誰だ!」
木戸が威圧的にいう。
「ばれちゃったじゃないバカ!」
出てきたのは金野と見覚えのない女の子だった。
「バカじゃないし、私はフェイだし」
「隊長さすがっすね、もう見つけてるなんて」
「えへへへへ」
39
「私がマンナズです。よろしくお願いします」
町の八百屋に買い物に来たルーンズは礼儀正しい子だった。
「ほかの方は?いらっしゃらないのですか?」
マンナズは羽渠とルミナスにたずねた。
「いまはいないよ」
気のせいか小さくチッといったように聞こえ、その後女だけかよと聞こえたような気がした。
「じゃあさっさといきましょう」
と少し態度から礼儀正しさが抜けたように見えた。
40
最後に残っていたカノだが、彼女は養鶏場から鶏を盗もうとして捕まっており、スーとシェネロティカは彼女と一緒に平謝りし彼女を連れ出すことに成功した。
結局今晩のご飯はチキンカレーだったらしいが、無駄に手がこってたり方法が間違っていたのは彼女たちが少しずれているからだろうと小次郎は結論づけた。
協力者はそろい作戦名”リトルバスターズ”は明後日決行されることになった。
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