サブアームヘッド、新光皇暦2015年

1,SLEEPYHEADS

アームヘッドモドキサブアームヘッド 


私がアレをみたのは父がリズの病院で亡くなったときだった。そう私がみたのはオオカミだ。槍を持った戦場のオオカミだ。テレビに映っていたんだったか。幼い私にはそれが強さの象徴に見えた。そう呪われた運命に負けない強さに。

 その頃から彼は私の傍らにいる。隻眼のオオカミ”ヒルドルブ”はいる。彼はずっと私のそばを離れない。


 最後にヘブンに残されたフロンティア、暗黒の大陸、東アイサ。

 寂れた町並みには多くの人々がたむろしていた。目的は俺たちと一緒だろう。そうアームコアだ。俺は多少の旅行気分で、アイネアスとスーを連れ、俺はここに危険なアームコアがないか調査に来たのだ。そうラグナロクのような、おっともちろん”ユグドラシル”は危険ではなかったか。さてまずはどこかで腹ごなしでもするかな。

2 

 私は正直居づらかった。想像してほしい、仲のいい夫婦と一緒に一人で旅行にいく身を。やってられっか。

 私は落ち着かない。しょっちゅうその辺を見回している。道行く人々はいろいろな人がいた。ふと、目があった奴がいた。

「板利・・・?」

いやそんなはずは・・・?

「メシにしようぜー」

菊田のそんな声でハッとする。

「ちょっとトイレに行ってくる!」

 私は恥ずかしげもなく言ってそのビルの小さな食堂から飛び出した。板利を探さなくては。

 私がビルを出た瞬間それをみはからったように爆発がおきた。爆発?どこから?私は爆風で飛ばされている。え?音が聞こえる。爆発音?

その轟音は現実味がなかった。思わずつぶやいてしまった。

「え・・・」

 そこからはあまり何があったか、覚えていない。気付いたら御蓮に帰ってきていた。

 シルト、”盾”の名を持つ暗殺者がまだいたのか、捨て去っていたはずの過去が現在に牙をむいて存在感を見せた。 板利 黄盾、ゲルプシルトは私のかつての友人だった。かつての友人は今の友人を菊田 言左右衛門とアイネアスを、殺した。

 スリーピィヘッド、それがテロリストの名だった。反御蓮の独立強硬派という名目の最低のテロリストどもだ。暗黒大陸にカムイ以外の独立国の樹立という理想を掲げながら非人道的な兵器を運用している。そしてそのクズどもに力を渡しているのは・・・。

「ヒルドールヴ、潰してやる」

 菊田武蔵はつぶやいた。何度目だ?もう息子は帰ってこない。奴らは俺の封印した技術を勝手に使っている。許せない理由はいくらでもあった。復讐なのか、仇なのか?もう尻込みする必要はない。彼らも力を貸してくれるはずだ。息子達の未練をはらしてくれる。

 宝生はまだ小さい親友の娘をみながら、行きおくれていきそうな自分を嘆いていた。誰か相手を探してみようとふと頭をめぐらすと、一人思いついた。菊田だった。

 いやいやいやいやないないないない。無駄に焦っている自分をみて、秋那ちゃんが不思議そうにこちらをみる。うんないよね。

 最悪の知らせはこのちょっとした妄想のすぐ後だった。


 菊田 言左右衛門が死んだ。

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