アフター・ザ・レジェンドその2、新光皇暦2008年

旬香はファニオアゲハに乗って友人の家へ向かっていた。雪那が危ない。それだけではない、菊田の真意を確かめなくてはいけないのだ。

このアームヘッドは仕事道具だが細かいことは気にしてられない。


電話がかかってきた。

あまり出たくない相手だ、自分の兄、金太郎である。

「飼い犬に手をかまれたのか平幸?軍以外にもアームヘッドを作って私たちの地位を脅かそうとしていたのだろ」

この時期にこんな嫌がらせをしてくるなんてさすがは兄上サマと言ったところだ。権力にしがみつき世界を自分の思い通りに動かしているぼけは私が自分の地位を脅かそうとしていると妄想しているらしい。その妄想の中ではトゥ・チェンジ・ザ・ワールドは私の手駒のようだ。

「軍のTGIMとしての再編や此花帝の即位で政次郎兄さんや武三郎兄さんに泣きつかれてるんでしょ、嫌がらせをするヒマがあったらお守りをしてあげたらどうです?魔王サマ」

この言葉は金太郎の痛いところをついたようだった。

「き、貴様!」

「まあ村井研究所も菊田重工もあなたのおもちゃだと思わないことですね、幾重減党や御蓮そのものがそうであったようにね、後心配しなくてイイ。我が愛しの息子が持ってきてるから救世主をね」

これ以上話をする必要はないと拒絶するように電話を切った。



雪は雨に変わっていた。

もうすぐ村井研究所だ。


反射的にかわす、剣が飛んできた。アームヘッド?

それは菊田言左右衛門の愛機スルトに違いはなかった。


「良くきたな」

菊田はただそういって勝利の剣を抜いた。


覚悟していた、スルトといや菊田と戦うことも。


でも心の底ではそうでなかったみたい。スルトの攻撃をよけるのが精一杯だった。


「どうした?雨の中なら勝てると思ったのか」

勝利の剣がファニオをとらえる。



「どうして」

旬香はたずねた。

「もう、トゥ・チェンジ・ザ・ワールドには関わるな」


一機のアームヘッドがスルトに突撃した。


「ブリュンヒルデか」

菊田はつぶやいた。


「旬香!アームキルしなさい」

雪那が叫ぶ。


スルトは止まっている。

菊田にアームキルを?そんな。


とまどっているとスルトは研究所の方へ向かっていった。

「待ちなさい!」


「旬香」

菊田が言った。

「悪いな、これは俺とあいつの問題なんだ、少し俺を見守ってくれないか」

「あいつって」


「俺は自分自身と向き合う時間が必要なのさ」


そういうと菊田は去っていった。

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