パニッシュメントその15、新光皇暦2009年
テーリッツ、テーリッツ。俺を呼ぶ声。ザーニ・テーリッツは皇帝の娘ルー・ヴァイス・プラントの子。二代皇帝クルエル・ヴァイス・プラントはプラント帝国からザーニを追い出すことにした。...とされている。その真実。二代皇帝は初代皇帝の生き写しだった。実際そうなのだ。ゆえに。
ヴァイス・マキータ・プラント、初代皇帝だが一人の忠臣によって命を救われている。御蓮出身のその男はザーニの父であり皇帝によりテーリッツ姓を賜ったのだ。だが皇帝はそもそも滅びぬ。彼は呪われているのだ。彼は五世紀の後に果たすべき役割がある。故に滅べぬのだ。クルエルもまたヴァイスだ。
リズ...と呼ばれる地にザーニに旅立つのは皇帝がその呪いから彼の一族を遠ざける為だとされる。滅びの天災は帝国の地を消し去るやもしれぬ。かくして彼の一族はアイサの地を離れた。だが五世紀が立ち眠っていた運命が目覚めた。
「変な夢だったぜ」俺は朝食のドーナツを食べることにした。
マキータ・テーリッツだ。俺は...。ドーナツ大好きマキータくんはテレビをつけた。ドーナツコーヒーの豊潤な香り。ニュース、「うていが行方不明になり、プラント帝国は騒然としています。現地の...」「大変だなあ」
ゆっくりとした平和も砕かれる通信が来る。
プラント皇帝救出作戦である。時は2009年6月。アウタゴッドフレンドの言ったそのときも近いのだ。
三機のセイントメシアが宙をいく。カンザキのセイントメシアが先行し俺とブライアンの二機がそれについていく。皇帝はアームヘッドオリジンにのり帝国と連邦の国境付近にいるとのことだ。帝国と連邦の国境地帯には五つの巨大な塩湖が存在しそれらと海の間を細い陸が繋ぐ。
やがて平野が見えてきた。金色のアームヘッドと灰色のアームヘッドが見える。そしてその他に後ろに三機の特異な形状のアームヘッドが侍る。「エクジコウ様、お遊びが過ぎたようです、援軍が来ましたぞ」「ドゥティーよ、エクジコウ様なら問題ないとディステニーは考えるぞ」通信?いや"喋って"いる。
「ドゥティー、ディステニー、挨拶は大事だぞ、自らがなにに滅ぼされたか知らぬのは不幸だぞ」「つまり我らでやればいいと考えるのか」「そうだぞ」「エクジコウ様、レイラインのお相手はお任せいたしましたが我らトリニティミニオンに雑魚の相手はお任せを」「...」「どうお考えで?」
「ユニティー...」「なんでございましょうぞ」「私に任せてくれないか、私は完全なお前たちと違い、このからだになれていない」「承知いたしましたぞ」「そうお考えならば...」「おい、きゃつら...」気付かれた!くっちゃべってるうちに俺たちは皇帝のアームヘッドを抱え逃走!
「気づいたか、あのアームヘッド?」「ああ、奴らはヤバイ」恐らく完全な融合個体だ。しかも調整されている...。「ソウイウ意味じゃなくてな、気付かれたようだ」そっちか、いやそっちもだな。金色のあれがエクジコウだ、それに三つのティー、追ってくる。セイントメシアの機能を逃走に集中させた。
やがて、振り切って見えなくなった。だが、もう奴らは降りてきている。計画の達成も近いというわけか。目の前に夜空に大きく写るトンドルの月が見えた。
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