パニッシュメントその7、新光皇暦1215年

俺は緑の太陽の真下、ポーリーと二人浜辺に腰を下ろしていた。「目的はいったいなんなんだ。ここはどこなんだ?昔のアプルーエ?」「久しぶりね、マキータ・テーリッツ」「え?あ、お前はポーリー・パトリシア・白樺!ニキータの友人の!」「やっと思い出したのね。ようこそ」

  


「ようこそ...?」「ここは私の心の世界、いえ正確ではないわね。私の中のムスタング・ディオ・白樺の記憶の世界」「ムスタングの...?」「あなたを滅ぼそうとしたムスタングは逆に滅び、忘れ去られた私が顔を出したわけ。ありがとうね」「俺はなにもしていない」「そうなの?でもあれはすごい」

  


「ここからはどうやって出られるんだ?」「さあ、最後まで見ればいいんじゃない?」「そんな...」「ムスタングはあなたにこれを見てもらいたいのかも」「どうして?」「ポーリームスタングだもの」「いやそうではなくて?」「理由?見れば分かるんじゃない?私は、彼はあなたを消しにわざわざ未来から来たのよ」

  


「未来から...?」「そう2011年、ムスタングはこの時代に旅立った、そこで何かを見た。そしてあなたを消すことにした」「いやいやいや、分からないぜ」「あなたは結果はどうあれエクジコウを滅ぼす。それは都合が悪かったのね、彼は歴史を変えるため今度は彼の方からエクジコウに接触した」

  


「エクジコウってあいつか...」「そうねなぜか彼はエクジコウに御執心なの。彼こそが代替特異点オルタナティブ・シンギュラリティから世界を救うと信じている」「俺が英雄を殺す悪だと」「そうなっているのかも」「勝てる気がしないぜ」「そうね、彼の危機感は異常ね」「共に戦えないのか?」「え?」「俺は今、ヒレーの仇に協力している」

  


「誰もがあなたみたいにうまくいかないわ」「本当にそうか?」「やってみたら?」「見ていろ、俺はここから出てやるぜ。ヒレーのくれた命だ無駄にはしない」「さすがニキータの弟ね」「え?」「なんでもない」


「ここは本当に過去の記憶なのか?」緑の太陽、進化する代替特異点、ずれる歴史...。

  



パトリシアの家、フォックスアイ家の屋敷は町から離れた場所にあり無事であった。パトリシアはすでにフォックスアイ家当主でありこのまちの領主だ。マリーのダッカー家と領地が隣接しており両家の関係は深くパトリシアとマリーは子供の頃からの付き合いだった。

  


町には被害があったが、奇跡的にマリーは無事であった、パトリシアと別れ町の様子を見ていたとき、あの怪物の襲撃にあった。ダッカー家からそれを心配する使いのものが来たが本来の目的を果たすため、マリーはこの町に残った。ダッカー家、そしてフォックスアイ家は他の王国貴族と共に同盟国を迎える。

  


ゴレンの侵略の知らせを受け同盟国ウェスティニアは援軍を派遣した。それを率いるのはもう一人のムスタング、ロボ・ムスタング・ヒルドールヴである。

  



馬(正確には生物種としてのウマはこの惑星には存在しない人の騎乗する動物を便宜上馬と呼称する。おもにユニコーンやドラゴン、ダチョウなどの一般的な動物が馬として用いられる)に騎乗し、ロボはフォックスアイ城へ自軍を率い向かっていた。

  


フォックスアイ城はフォックスアイ領の中心でありパトリシアの居城である。そこにダッカー家のマリー・ダッカーなどのガリア東部有力諸侯が集まっていた。ロボの行進に市民が声援を送る。馬にまたがったパトリシアがこれを迎える。「よくぞ、来てくれた。ロボ殿」「あの敵はなんなのじゃ」ロボが囁く。

  


「アマナの軍勢ですか」「我輩も交戦したのじゃ、あれは化け物の類いではないか」「はい、しかしご無事で」「我輩はまあまあ強いのじゃ」ロボはまだ十代だが、ウェスティニア最強の将軍と言われていた。「はて、マリー殿は見えるかな」「はいおります」「おお、マリー殿、今度も我輩の活躍を見せようぞ」

  


「え、。ええ...」「ところでフォックスアイ殿、貴殿があの怪物を撃退したという噂は本当かね?」「...根も葉もない噂です、私はかよわいお嬢様ですので。ぶっ!失礼しました」「そ、そうかね」ブラックシープに乗ってるのを見たものがいる。「さあ、歓迎しますよ」「ひとつ不穏な噂を聞いた」

  


「なんですの」「アマナ軍は既に壊滅していると、実際船の残骸を沖で発見したのじゃ」「じゃああの怪物は一体…?」「これはもしかしたら戦争ではないのかもしれんのじゃ」


「パーティーとやらは終わったのか?」白樺は問うた。彼は城内の一室に隠れている。「いえ、まだ続いてはいます、抜け出して来ました」「いいのか、主役が」「もう、飽きた」「…」トントン。ノックの音だ。「マリーだよ」マリーが入室した。「ロボぼうやとのダンスは終わり?」

  


「あの人しつこいのよねー」「プッ」「ところで...」白樺は一応敵国民になる、ここにいると色々不味いのではないか?ということで。「あなた、リズに行きなさい。そこなら平穏に暮らせるわ」「いいこと思いついた姉さん、私達も一緒に行きましょう」「そうじゃな、我輩も御供したいのじゃがいいか」

  


「ロボ!」「ロボ・ヒルドールヴです、どうも」「なぜここに?」「マリー殿の匂いをたどり馳せ参じた所」「この野郎...」「マリー殿、怖いですな、ところでなぜここに?」「白樺だ、ヒルドールヴ殿」「白樺殿、ではなぜここに?」「あの怪物だ、御蓮軍はあの怪物にとって変わられた」「ほう」

  


「主君にその真意を問いたいのだ、故にフォックスアイ様、あなたの提案は飲めませぬ」「俺も飲めぬ」パトリシア自身が言った。「そして、小僧、俺に気づいているな」「お化けがおったのか、ではやはりパトリシア殿を操りあの怪物を倒したのもおぬしか?」「そうだ、我が名はシリアス」「提案がある」

  


「なんだ、小僧。言ってみろ」「我輩にとりつけ、パトリシア殿よりは鍛えておるぞ」「断る」「なぜじゃ!」「俺はこの小娘を気に入っているんだ、小僧。お前に興味はない」「パトリシア殿をとり殺すつもりか!化け物め!」「逆だ」「は?」「シリアスを磨り潰して貰いたい」「戯れ言を…」

  


「それと小僧、いいことを教えてやろう。汎統宮パンスペルミアに気を付けろ。やがてお前の一族ヒルドールヴに害をなす」「半滑宮...?」「パンスペルミアとはなんだ?」「興味がなくば、覚えずともいい。俺は奴のせいで産まれた。故にお前のいう怪物が現れた」「あれが何か知っているのか」「俺は全てを知っている」

  


「奴らは夜の怪物、代替たるもの、お前たち昼のものどもの代わりだ。日の出ともに滅びた彼らはもう一度自分の時代を作ろうとしている。故に夜から来た。もうすぐ日没だ。奴らはトワイライト・アゲイン」「トワイライト・アゲイン…?」「また夜が来る」

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