パニッシュメント

パニッシュメントその1、新光皇暦2001年

俺は幸太郎とともに皇帝の真意を探るべく旅に出ることにした。スカージのような化け物が他にもいるかもしれないのだ。そしてこの幸太郎という男を見極めねばならない。アームヘッドの残骸を村井研究所に任せ、東へと向かった。

  


そして八年の月日がたつのだ...。

リズ連邦イラチ大州、行政首府アモルに俺と幸太郎はいた。アモルはリズ大陸でも古い都市のひとつであり古代アプルーエの文化を今に伝えている。俺たちは行方をくらます為、各地に移動していた。あの日、俺は死んだことになっている。今の行動はリズに対する裏切りだ。

  


そう、見つかるとヤバイのだ。そして俺は辺りを常に警戒している。今日は何か怪しいやつがいるのだ。俺と同じブロンドに赤い目。そいつは俺に気づくと微笑む。リズの機関のものか?しかし見覚えがあるのだ。「おいマキータ、昼飯食おうぜ」幸太郎が妙に呑気なのが無性に腹が立つが腹もへっている。

  


「野菜サラダにジェノヴェーゼくれ」「えっと、ハンバーグ下さい、あとペペロンチーノ、あ、マキータ通訳して」ハンバーグ...。やがて皿が運ばれてくる。「マキータ、肉嫌いなのか?」「昔、グロい写真見てな。なんとかフラグーンっていう女の死体の」「あー知ってる、トロージャンのやつ、マジ...」

  


「トロージャン?」「そういうハンドルネームのむかつくやついたんだよ」「ハンドルネーム?」「まあ、そいつ今度あったらこらしめてやろうと思っててさ」下らない会話をしながら店を見回すとさっきのやつがいる。「おい出るぞ」「何で?」俺は幸太郎を引っ張るが、女が消えた。視界を塞がれる。

  


「だーれだ」後ろに柔らかい感触...。リズの手のものだったらまだましだった。「ニキータ...」「えっ知り合いなの?」ニキータは俺の双子の...。「…お、おきれいですね」幸太郎が若干赤くなりながらうつむいてしゃべる。こいつ事実知ったらどう思うんだ?「なんのようだい兄さん?」「?」

  


幸太郎が打ち震えているのは無視してニキータを見る。「娼婦風スパゲティ下さい」「おい」「私は警告に来た」ニキータがこちらを見る。「ムスタング・ディオ・白樺に気を付けろ、やつは特異点だ」「特異点...」そのときだ。ナイフがこちらに飛んできた。それを驚異的な反射神経でニキータがはじく。

  


「ニキータ、あなた裏切るのね...?」「ジャガーか。...マキータを見殺しはできないのでな」「ちょうどいい、三人まとめて始末してあげるわ」「え?俺も」


ジャガーはナイフを投げ続ける。レストランの客たちは外に逃げる。ジャガーが接近する。俺は幸太郎を机の下へ隠し俺もそこへ逃れる。バタンと大きな音がする。ニキータがジャガーを押し倒したようだ。そのときだガラスが割れる音。車が店内に突入してきたのだ。「来たか...」

  


「ムスタングのアームヘッドだ、逃げるぞ」ニキータが手を出す。机から出るとジャガーは倒れていた。「死んでいるのか?」「いや気絶させただけだ」その時、ナイフがジャガーの首に飛び刺さる。その方向をみるともう一人のジャガー!「くっぐふ」ジャガーの一人目が息絶える。「これで私がジャガーになれるわ!」

  


二人目が狂喜している隙に駐車場へ、車に乗って逃げる。後ろから迫る車。「あの車がムスタングのアームヘッド、ジェネラル・リラティビティだ」車のアームヘッドだと...?


  ムスタングのアームヘッドを振り切り、俺は車の助手席に乗りながらニキータに問う。「あいつは一体何者だ。一体何が目的なんだ?」「やつはエクジコウに協力しお前という不穏分子をとりのぞこうしている」「どういうことだぜ」「分からん、あいつの考えはもう分からん、あいつは変わってしまった」「お前が協力者でない証拠は?」

  


幸太郎がニキータに問う。「それは大丈夫だ、俺は信じている」「マキータ...」「ならいい、ただあいつはなんなんだ?リズの不穏な研究のことを聞いたことがあるがそれか?」「そうだ、俺がかつていた、研究NAE計画の産物だ。特異点ムスタングはな」「そして私もそれでパワーアップしたわけ」

  


「性別も変わってな」俺はあきれたように言う。「しかし、スカージに乗ったと聞いて心配だったけれど、無事で良かった」ニキータもかつてはスカージのテストパイロットだったのだ。「あれ、生き残りはいないんじゃなかったけ?」「人間の生き残りはね」ニキータと別れ、また別の地へと向かった。

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