リベンジ中編、新光皇暦1990年

そして三年後。俺たちは帝国と戦いの前線にいた。リズ連邦はアームヘッドを先行導入した帝国をこの五大湖周辺まで押し返した帝国の喉はもうすぐ先だ。ヒレーはアームヘッド隊長としても強く専用機のブリュメールも非常に心強かった。このままこの戦いも終わり平和が戻ってくるだろう。

  


俺がリズの貧民街にいた頃からこの戦いは続いていたらしい。ヒレーはこの戦いで多くのものをなくした。俺をアームヘッドに乗せたのは寂しさからだろうか?しかしそれは同時にここで俺を喪うリスクという矛盾をはらんでいる。ヒレーは俺がついてくるのを拒んだ、だが俺は来た。ヒレーを守る為だ。

  


俺がヒレーを守るだなんてのは冗談にしても笑えない。だが俺はいままでヒレーが助けてくれたことを知っていた。あのアームキル事故も庇ってくれたことをガールが教えてくれた、あのまま退学にならなかったのは不思議だったがそういうことだったのだ。俺は恩知らずではない、フォネもプロセスもいる。

  




「緊張はしてないか?」「ああ、大丈夫だ」「あの事は考えてくれたか?」ヒレーの養子になるということだ。俺はこの戦いが終わったらヒレーを父と呼ぼうと決めていた。もうその時も近い。しかしアームコア反応がした。それも七つ!

  




アームコア反応とはアームヘッドのアームホーン電波を察知しアームヘッドが近付いたことを感じとるシステムである。七つの反応だから七体も来ただがこちらはヒレー機のブリュメール改、メシドールフォネ機、プロセス機、ヴァントーズが二機つまり六人で不利だ。ヴァントーズの反応が消える!

  


ヴァントーズの反応が消えたのは同時だ、連携が得意な敵か?まとまった俺たち四人のまえに赤白のアームヘッドが降り立った。「雑魚は掃除した、こんにちは皆さん」赤白のパイロットの態度は丁寧だが血塗られた翼が不気味!「ブラッディフェザー...?」「知っているのか?フォネ!」

  


「獅子騎士を倒したアームヘッドだ、7つのアームホーンを持つ悪魔」「7つ!7つもか?」フォネが狼狽する。「チートじゃねえか?」「月並みなセリフですが、仲間になりませんか」赤白がいう。「リズを裏切れと言うことかな」「そういうレベルの話ではないことはお分かりでしょう?」

  


「私たちの敵は帝国でも連邦でもありません、セブンシスターズです、わかりますね?」「セブンシスターズ…」「隊長?何ですかそれ」「夢に時おり出る単語だ意味は分からん?」「ふんまだ自覚なしか、どうします?」

  


「決まっている」「ほう」赤白が構えた。「お前を倒し、この戦いを終わらせる!」「この戦いは終わるでしょうね、私に勝てたらですが」赤白が消える!フリメールがアームキルされた。同時だ。あいつの爪先もアームホーンだ。フォネとプロセスは?生体反応はある。安堵した瞬間後ろに迫る赤白!

  


迂闊な油断の隙をつかれた。「完璧なアームヘッドなぞ存在しない…このセイントメシアを除けばな!」セイントメシアの死神めいた鎌がヴァンデミエールを捉える。「そこまでだブラッディフェザー」セイントメシアこと、赤白のアームヘッド、ブラッディフェザーの後ろにヒレー、ブラッディフェザーの首を切断し止めを刺した!

  




「勝った」音もなく崩れるブラッディフェザー。この邪悪な赤白に勝ったのだ。ヒレーは本当に強い、また守られてしまった。「ありがとう、ヒレー」「いやまだだ」赤白が不意に立ち上がった!そして両手を激しく打ち付ける。「初めてだ」首のないアームヘッドは不気味、血のような真紅の潤滑液が滴る。

  


「この俺がここまでやられたのは、さすがはリズ最強の男」「どういうことだ!」「デュアルホーンの特性だ、アームホーンを全て破壊せねばやつは倒せん」「無理だ!」「その通り」赤白が急加速する。ヒレーは槍を赤白に向ける、意に介さず突進、衝突!だが折れたのは槍のほうだ!


赤白が浮上、鎌を降り下ろす、ブリュメールは両手で防御するも、両手ごと破壊、前腕機能停止。だが、それ以上動かない。ブリュメールの頭部回転アームキルだ。ブラッディフェザーとブリュメールが複雑に絡み互いに身動きが取れない。「やめろ」「いやだね」「やめてください、あなたが死んでしまう」

  


「ふ、敵に心配されるなんて落ちぶれたものだな」「分かった、ここは引くだから...」「もう...駄目だ、お前さん強すぎるよ...」俺は呆然としながら通信を聞いていた。ヒレーの生体反応はもうない。

  


そこから先はもう覚えていない。

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