アームヘッド マキータ年代記

みぐだしょ

リベンジ

リベンジ前編、新光皇暦1987年

俺は今までのことを思い返す。俺はいつも1人で生きてきた。リズの首都ニューストライプスの闇、スラム街で暮らしてきた。あの日から。今日は俺の人生が再び変わった日だ。いつものように俺はちょうどいいカモを探していたのだ。すると2人の男が迫ってくる。カモである、男2人はアームヘッド云々の話で注意散漫であり隙だらけだ。


 観察すると片方はガタイのいい筋肉質な軍人風の男、そしてやや細い身なりのいい男、ポケットが膨らんでおり財布がこんにちはしている、それをいただいてさよならよ。俺は影に隠れ待つ。やがて到達する二人。俺は飛び出し財布を奪い走る。男がなにかしゃべるがもう遅い、撒いた。だが、財布を確認すると後ろに気配、軍人!羽交い締めにされる俺。体と体が密着する逃げられない。「俺はヒレー」軍人が言う。「財布かえすからやめて」俺は懇願し殊勝なふりをして逃げるチャンスをうかがう。


「警察につき出す」無慈悲、やがてもう片方の男も近づく。「大丈夫かヒレー」「ガール、ちゃんと捕まえたぜ」ヤバい逃げられない。「いいことを思い付いた」ヒレーが笑う。なんという邪悪ないいことか?ヒレーとガールが密談。「成る程、警察の出番はあとでもいいというわけだな」俺は圧倒的な不安を感じていた...。

  


ここはリズ陸軍基地というところらしい。なにやら俺は謎めいた実験をされるらしい。「俺はフォネ」「僕はプロセス」など自己紹介をされたがヒレーは「取っ捕まるかもだし不要」と失礼なことを言う。やがて目の前に白い巨人、いやロボットか。二階建ての家並みのサイズの大きさだ。「乗れ」ヒレーに言われるがままそのロボットに近づく。そのロボットは誘うかのようにその腹のうちを曝け出した。乗り込んだ俺を包み込むようにそのコクピットは閉じられた。


これがアームヘッド。やや窮屈な操縦席に乗せられた俺は棺桶のようになにもないその空間で手を前に伸ばす。するとスクリーンが投影された。「DH」と表示されたあと覚醒という文字とおそらくなんらかの量を表すバーが下に現れた。それが100%に達した時、俺の意識は飛んだ。


俺はリズの都会にいたはずだ。だが目の前に写る景色は密林だった。蔦から蔦を渡る俺の姿は普段とまるで違っていた。俺は池の前に降り立ち、水面を覗き込んだ。映った顔が笑った。「おはよう」


意識がアームヘッドの操縦席に引き戻される。そうだここは無理やり連れてこられた軍事基地だ。  



「こいつ動くぞ」俺は白い巨人と一体化したような気分。「よくやった」ヒレーは実際嬉しそうだ。成る程これがアームヘッドか、パイロットを選ぶ不便なロボットの話は聞いていたが本当だったとは、俺がこれを動かせるならこれを奪い高飛びするのがいいだろう。「おいどこへいく」「グッバイ、ヒレー」  「ガキがヴァンデミエールを奪って逃げた!」ヴァンデミエール、こいつの名前か。ヴァンデミエールが宙に浮き、壁にかけてあった銃を奪い取るとその壁を蹴破って外の世界へ飛び出す!


そこへ、二体の緑白巨人!くっ逃がさぬというわけか。「とっと降りたまえ」「このフリメールの暴力を味わいたい場合は除く!」先程のフォネとプロセス!二機のフリメールとヴァンデミエールが向かい合う!フリメールは左右に分かれ、ヴァンデミエールの行手を阻む!先程の銃をフリメールに放つ!「素人め!覚醒壁にそんな豆鉄砲は無意味だ!」放たれた銃弾は空中で静止しそのまま勢いを失って落ちた。「アームヘッドに遠距離武器は通じんぞ!」ヒレーが叫んだ。じゃあなんでここにあるんだよ……。「頭を使え!マキータ!」ヒレーのアドバイス、なぜ、いや俺は単純ばかではない。このボタンか。頭を使えってこういうわけだぜ。白い巨人の頭が回転した。敵がなぜか怯んだ。「まじかよ!こいつ!」

  


怯む隙をつく俺。二体の巨人を撒いて外!自由な!あとは気ままにアームヘッドで最強よ。売って大儲けだ。だが、後ろに気づくと緑の巨人。「くっ、おいついたというわけかヒレー」「さあかかってこい」いやだ逃げる。撒いたか?ふと気づく緑の巨人。「かかってこい」「かからないぜ」逃げる、撒いたか?

  なぜだ?必ずすぐ追い付かれる。「これが調和能力マン・ハントだ、相手の後ろへの瞬間移動」「それはオカルトか?…だがおかしい」逃げ回りついにリズ首都近郊浜辺。「かかってやるぜ」「そうしろ…」再び頭回転。「ほう…詳しいなアームキルを知っているのか」「お前が教えてくれたんだぜ」「何を言っている?」

  


だが、ヒレーの実力は圧倒的!回転した頭の先を自らの武器で払い両手でヴァンデミエールの首をつかむ。「終わりだ、だがなかなか筋がいい」「もっと教えて貰えれば次は勝つぜ」「楽しみだ、教えてやるよドーナツの作り方とかな」そして俺は三年間、このいい男と暮らすことになるのだ。それは今までで一番幸せな時期であった。


「そろそろ焼けてきたぞ」いいにおいが立ち込める室内、ヒレーと俺のマンションだ。カッパのデフォルメアートが描かれたLサイズのエプロンもヒレーのような屈強な大男が着ると子供用めいて小さく感じられる。テーブルにいいにおいが漂う。「出来たぞドーナツだ」「ドーナツ?」「美味いぞ」

  

俺はひとつを手に取りかじる。そして俺の人生がこの瞬間変わったのだ。この味、俺の知っていることばでは言い表せない、この世界の希望、そう俺はいままでこの世界には絶望に充ちていて過酷だと信じていた。だが!この神聖なる食べ物はどうだ!俺の間違いを言葉など使わずに正してくれた。「美味い」

  


ああなんて素晴らしいのだこの神聖なる食べ物は美味いなんてものではない。素晴らしいのだ。素晴らしいどころではない、ああもっと食べねばもっと厳かに。おお気づくと俺は涙を流していた、枯れたはずの涙を。感動とはこういう感情なのだな。二口目、おお甘さのなかにあるもっと奥ゆかしい味が。

  


素晴らしい素晴らしいああ。なんて幸せなんだこのこの「ドーナツ」は!「まだまだあるぞ」え?「もっと食べていいのか?」「ああ、どんどん食え」俺はその日、その言葉を聞いて喜びのあまり失神したらしい。

  


アームヘッドのパイロットにされてしまった俺はリズの基地に通うになった。すると俺のロッカーがめちゃくちゃである。成り上がりのパイロットの俺は嫌われているらしい。心当たりがある、プロセスだ。「お前がやったのか」「そうだスリ野郎」言い返す言葉がないので殴った。「ママー!」プロセスが泣き叫ぶ!「おいよくもやってくれたな!」フォネが殴りかかる!  



しかし、喧嘩の仲裁をヒレーがし三人ともぼこぼこにされ反省文を書かされたのでロッカーの分損した。ロッカー代はヒレーの給料から引かれたようだ。なんだかよくわからないうちにフォネと俺は仲良くなり学校に行くときの助けになった。

学校では普通の勉強もあり興味深く簡単だったが、それを小学生のようだとプロセスにバカにされたので殴ったら殴り返された。そして再びヒレーにぼこぼこにされ反省文だった。ヒレーはこの学校でアームヘッド操縦を教えているらしい。そして授業で俺の機体ヴァンデミエールで実戦演習をすることになった。相手はフォネだ。

  


アームヘッドは一人一体で別の機体に乗れることは滅多にないのだ。理由はよくわからないオカルトだ。そしてフォネもあのときのフリメールに乗って現れる。学校のアームヘッドスタジアムで対峙する二機。「アームキルは禁止だぞ」「おいお得意の必殺技は禁止だぜ」フォネが挑発した。

  


アームキルとはアームヘッドを一撃で倒す頭部のアームホーンを用いた必殺技だ。これをくらったアームヘッドは自分の体重で崩壊する。俺は迷わずあのボタン、頭が回転する。ヒレーが笛をならす。「おい!アームキルは禁止だ!」「べつに当たらなければいいはずだぜ」「卑怯者め」「お前もすれば?」

  


フリメールに頭部回転機能はない、アームキル専用形態はリスクも大きいのだ。ヒレーのような熟練者が相手だと余計そうだ。だが相手は俺と同じ初心者、たった数ヵ月の差だぜ。フリメールがトンファーを構える。やる気だぜ、まあ俺も逃げる、って訳にはいかんしな。フリメールが消える!早い動きだ。

  


ヴァンデミエールは跳ぶ、上から確認、横にいたか。膝のブレードをしたに向ける。フリメールに向かうがかわされ地面に刺さる。しまった!身動きができぬ。迫ってくるフリメール。トンファーが来る。フライトシステムで受けフライトシステムが破壊される!やっとブレードが抜ける。うかつだった。再びトンファーが来る!ヴァンデミエールは砂を蹴り目潰し、怯むフリメール!

  


ブレード!トンファーがいなす。ブレード、トンファーがいなす。はったりのアームホーンだ。これがいけなかった怯んだフリメールの破れかぶれのトンファーが足に当たってヴァンデミエールがこけてフリメールにアームホーンが刺さったアームキルだ。俺は必死にフォネを救出する。フォネは無事だったがぼこぼこ反省文がまた繰り返された。  

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