第19話 二人のその後

 外はすっかり夜の帳が下りた。今は日奈を家まで送ったところだ。と言っても隣なので大した距離じゃない。徒歩三十秒以内だ。

 だから夜道が危険だから、心配だから日奈を送ったわけじゃない。ただ僕がずっと日奈の近くにいたかったからだ。

 家に入って、自室へ向かう。リビングにはいつの間にか帰宅していた母と父が楽しそうに話していた。

 僕は二人の空間を邪魔しないように、静かに階段を上った。

 部屋に着くと、僕はベッドにダイブした。悶えたかった。

 ――ハルと、結婚したい

 日奈にそう言われた。あの時は冷静を装うので精いっぱいだった。もし少しでも冷静さを欠いていたら、どうなっていたかわからない。よく堪えたと、あの時の自分を褒めてやりたい。


「結婚、か……」


 ウエディングドレスを着た日奈は、さぞかし綺麗なんだろう。純白のドレスに身を包み、煌びやかな装飾に彩られた日奈を想像するだけで胸が弾む。

 僕は未来の自分たちの姿を想像し、胸を躍らせた。


「よし」


 ひとしきり堪能し終えた僕は階段を降り、母と父が待つリビングへと向かった。二階にまで漂ういい匂いからして、晩御飯ももう少しだろう。


 ♥


 ハルに送ってもらってから、私は自分の部屋に直行した。そして部屋に入った瞬間ベッドにダイブ。ベッドが軋み、反動で体が少し浮く。

 うつ伏せの状態で、抱きしめた枕に顔を埋める。思い出すのは、あの時の言葉。私が結婚したいと告げた時の、あの言葉。

――うん、結婚しよう

 思い出すだけで心が高鳴る。バックバックと心臓が脈打ち、顔が赤くなる。ついでに足もバタバタ。

 長年の想いが、遂に叶った。

 好きな人に好きと伝えて、恋人になって、デートして、結婚して、子供を産む。それが私の理想の未来図だった。もちろん〝好きな人〟というのはハルのことだけど。

 それが、叶いそうになっている。まだ恋人になったところまでだけど、小学生の時に達成した〝好きと伝える〟から、約七年かかって関係が前進した。これは大きな一歩。

 あと何年かかるかわからない。けれど、ここまで来たんだ。これからは一直線に、寄り道なんかせずに、ゴールまで突っ走ってやる!

 そうと決まればこうしちゃあいられない。今からでもやれることをやっておこう。

 まずは……睡眠かな! 夜更かしは美容の天敵だからね。まだ九時前だけど寝ちゃおう。夜ご飯まだ食べてないけど、ダイエットにもちょうどいいし、別にいっか。おやすみなさ~い。

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