第4話 外に出るために。

 装備の効果はしっかりと発動していた。だとすれば、この目立つ容姿を何とかすることが出来る可能性が見えてくる。その可能性とはアクセサリー枠で装備している『灰降る夜のケープ』だ。


 灰降る夜のケープ。このアイテムは-効果しかないデメリット装備だ。しかし、そのデメリットの中に唯一のメリットが存在している。それが注目度-70%。敵から非常に狙われにくくなるのだ。物理攻撃力-2,000、魔法攻撃力-1,000とかなり厄介のデメリットを抱えているものの、それでなくてもノーブルローズドレスで注目度が+30%あがっているスノウとしては、注目度-70%はそれを補って余りあるメリットなのだ。

 さて。では、ノーブルローズドレスから俺の私服に着替えれば?当然ながら俺の私服には男物しかないが、それでも頑張れば女性でも着れるものは一つや二つ存在している……筈だ。そこに、上から灰降る夜のケープを羽織れば?注目度は30%になる!……筈なのだ。

 いくらこの容姿でも注目度を30%にまで薄めればそこまで注目されないと思いたい。そんな訳で包丁を置き、ドレスから着替えていこうと思ったのだが……。


「これ……どうやって脱ぐんだ?」


 ぴしっと肌に張り付くようなドレスに一見して留め具のようなものは無く、困惑する。無理やりであれば脱げるだろうが、それでは次に着るとき着方が分からなくなって困りそうだ。


 そうして、数十分の激闘の末、なんとか無事にドレスを脱ぐことに成功した。


「ドレスを着るのは大変と聞いてはいたがここまで複雑な構造にしなくてもいいだろうに……」


 思わず愚痴がこぼれる。そして、ある程度脱いでどうしようもなくなった状態から気付いたのだが、このドレス。一人では相当無理をしないと着れないらしい。そりゃ、お貴族様が使用人に着せてもらう訳だよ!!


「当分、ノーブルローズドレスは封印だなぁ。というか、着れん」


 そうして、今の俺でも着れそうな服を探したのだが……


「な、無い……う、嘘だろお前……」


 まさかの真面に着れる服が一枚もなかった。スノウの胸部装甲は俺の想像を遥かに超えていたらしい。元々の俺の体系がそれ程幅広でなかったため、どれだけ頑張っても胸の上に大きな弛みが出来、そこから下は末広がりになってしまう。そしてこれ、空気がずっと入ってきて凄くお腹が冷える。しかも、上部で布地を消費してしまっているため、真っ白なお腹とおへそがチラリズムしてすごく恥ずかしい。


「うぅ……」


 羞恥心でか細い声が出た。くっそ、鏡で見る分にはすごくかわいいしエロい。でも、こんな恥ずかしい格好を自分でしたかったわけじゃないっ!!いや、まあ、不細工よりは全然嬉しいだけどね!?

 ノーブルローズドレスを脱いでから少し精神が不安定になっている気がする。これはやはり、ノーブルローズドレスの効果、気高き精神が俺に何らかの影響を及ぼしていたのだろうか?

 これならばケープの効果も期待できると自分に言い聞かせて無理やり精神を安定させる。


 ……よし、落ち着いた。落ち着いたと言ったら落ち着いたのだ。


 探したら出てきた少し大きめの白パンを履き、ジーパンをその上から履く。無理やりジーパンを引っ張って浮いている服をベルトの下に巻き込んで押さえつけた。よし、これで恥ずかしくはないっ!

 ……胸にかなり圧迫感を感じる。正直、結構辛い。多分長時間この服装をしていると相当肩がこると思う。これは、早めに買い物に出た方がよさそうだ。


 俺はシャツの上にコートを着てその上にさらにケープを羽織る。長い髪はコートの中に落とした。少しでも注目度は下げた方が良いと思ったのだ。


「……いくか」


 そうして俺は恐る恐る外へと踏み出した。


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