第3話 装備を確認してみた。
そうして、うんうんと悩み続けたが結論は出なかった。正直、どうしようもないとしか言えない。
しっかり悩んでも結論が出ない以上、身分証明の問題についてはいったん放置するしかないだろう。こんな問題、相談できる相手もいないしなぁ……。
さて、気を取り直して。身分証明のほかに考えないといけない事といえば何があるだろうか?
生活の上で大事なのは衣食住だという。とりあえず、住居については今の賃貸から移ったりしなければどうにか誤魔化しは効くと思う。契約は自動更新なのでしっかり賃貸料を払い続ければ問題ないだろう。別にぼろ屋という訳ではないので相当大声を出して暴れたりしなければ近隣住民からの苦情などもない筈だし、それに伴って立ち退きを宣言されるようなこともないだろう。
問題なのは衣と食か。当然ながら俺は女性ものの服など一切所持していない。当たり前だ。となると、調達してこないといけないわけだが……正直、外に出るのはリスキーすぎる。この容姿だ、ただ道を歩いてるだけで相当注目されるだろう。そして、食にも同じような問題が言える。
「うーーーん、本当にどうしたものかな~~~~……」
片目をつむり思わず腕を組んで唸ると立派な胸が強調される。鏡の向こうのスノウがあざと可愛い。思わず思考が停止したわ。
いや、現状それどころじゃないんだけどね。
そこでふと俺は今の格好を思い出してみる。
今着ているものはスノウが装備していたものだ。性能と見た目をある程度両立させた装備を選んでいるが、やはりセット装備ではないので見た目に若干違和感がある。そこで気づいた。そう、性能だ。
姿が変わったときから少し考えていたことがある。スノウは魔法使いだ。つまり、今の俺は魔法が使えるのではないだろうか?というものだ。ただ、これは周囲への被害が甚大な事になりそうなので安直に試せなかったのだ。
しかし、それとは別に試せそうなことがある。それは装備の性能だ。
それは防御力であったり攻撃力であったり色々ある訳なのだが、もし、俺の思っている通り装備が特殊な性能を有していた場合、今の悩みが解決されるかもしれない。
俺は一度、台所に向かい包丁を装備する。もし、攻撃力の加算とかがあっては怖いので腰の細剣は外しておくことにした。
改めて俺は今の装備を確認する。
【武器】包丁
【頭】へカティア・シス・ティアラ(スノウ専用)
【体】ノーブルローズドレス(二部位)(ノーブル・女性専用)
【腰】ノーブルローズドレス(二部位)(ノーブル・女性専用)
【脚】十二の刻告
【アクセサリー1】灰降る夜のケープ
【アクセサリー2】リング・オブ・ダイヤモンド
改めてみると何処のお姫様だと言いたくなるような装備だな……。おっと、性能確認、忘れる前にやるか。上から順に、
へカティア・シス・ティアラはスノウの専用装備だ。スノウのレベルが100になったときに解放されたサブストーリーで手に入れることが出来た。魔法攻撃力+1,000が装備の性能でスノウが装備時、専用効果で氷属性攻撃力+1,000と即死効果無効、攻撃時敵に対し稀に即死効果という性能だ。魔法攻撃力1,000だけならほかの装備の方が強かったのだが、さらに属性攻撃力が1,000乗るとなると他の装備よりもこちらの方が純粋に火力の底上げを図れたのだ。いやあ、まあ、現実になった今、魔法攻撃力なんているか?といわれてしまえば返す言葉もないのだが……。ただ、即死無効は現実になった今、突然の危険から身を守れる可能性を秘めている。何の効果もない装備よりは頼れるのではなかろうか。
次は体と腰。二部位の装備枠を使ってでもスノウに装備させたかった装備。ノーブルローズドレス。ローズという名前から赤を連想させるかもしれないがドレスの色は薄い青だ。これはノーブル=気高き者=貴族=青い血という事で青になったという説が濃厚。とあるイベントの際に実装された装備で装備ガチャから登場する最高レア装備だ。ちなみに限定。性能面でも見た目でも一級品で、ぜひ欲しいとガチャを回して大爆死。見事天井したという今でも記憶に新しい思い出のある装備だ。ちなみにこのゲームの天井は約10万円。マジ許さん。
性能は防御力+1,500に全属性耐性+10%、注目度+30%。専用効果で、薔薇の棘(近接攻撃を仕掛けてきた敵に対し回避・命中に関わらず固定ダメージを与える)と気高き精神(魔法攻撃力+1,000、魔法防御力+1,000、状態異常耐性+30%)を持っている。正直、この性能は頭おかしい。装備枠を二つ食いつぶした上に特性:ノーブルで女性しか装備できないという装備制限は厳しいものだが、それにしてもぶっ壊れ性能すぎる。まず10%とはいえ割合カットが装備についているのがやばい。また、大抵の防具では上がらない魔法攻撃力が上がるのもぶっ壊れといわれる要因だろう。ノーブルの女性キャラの7割は魔法型なのだ。そして、驚異の状態異常耐性+30%。状態異常耐性持ちの装備の中では最高峰だ。他の装備や毒姫などと組み合わせれば状態異常耐性100%で全状態異常が無効化出来ると当時は大いに界隈が荒れたものだ。
それはさておき、この装備なら包丁など刃も立たない……筈だ。
俺は恐る恐る包丁の刃をドレスの上から腕に当てる。ここなら出血多量でまずいという事もない筈だ。そして、思い切って包丁の刃を――引いた。
「はっははっ……」
恐くて失敗した。
ほとんど刃を押し当てれていなかった気がする。心臓がどくどくと脈打っている。うわ、めっちゃ緊張する。
「っ!……えいっ!!」
アドレナリンが出ている間に目を逸らして勢いよく包丁を引いた。今度こそ上手くやれたと思う。刃が肌の上を勢いよくスッと通っていった感覚した。
恐る恐る切った部分を確認する。袖は……幸いにも一切切れていなかった。腕まくりして確認してみると透き通った玉の肌にも一切の傷は無し。
「はぁああああああ……こっわ!!」
緊張が解けたからか思わず特大のため息が漏れた。すっげぇ、怖かった。
だが、これでこの装備には防御力があるという事が分かった。やっと、少しながら見えてきた将来への道筋に再び安堵のため息が自然と口から漏れ出ていった。
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そろそろ展開を進めるつもりです。もう少々、気長にお付き合いください。
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