第21話 水族館デート2

 先の館内放送にもあった午後3時より少し前、俺たちはできるだけ前の席を取るために水の広場へとやってきていた。


 「うわーまだ開演は先なのに結構人いるねー。」


 「かなり人気なんだな。早めに来て正解だった。...お、あそこ空いてる!行こう。」


 なんと最前列の席がギリギリ空いているではないか。ラッキー。これも日頃の行いの良さが出たな。

 ――え?お前の日頃の行いじゃないって?チョットナニイッテルカワカンナイ。

 

 「ほんとだー!良かったね空いてて。」


 しばらく有希乃と話をして待っていると何やらお姉さんが出てきて開演のアナウンスが流れた。


 「はい皆さん!こんにちはー!本日はイルカショーにお集まりいただきありがとうございます!では早速ショーの方をはじめさせていただきます!」


「お、始まるぞ。」


 内心ものすごくわくわくしてる。イルカショーなんかそんなに見る機会ないからな。貴重な経験だよ。うん。


 「では!イルカさんたちを呼んでみましょー!私に続いて大きな声で呼んであげてくださいね!それではいってみましょう!しんくーん!めいちゃーん!」


 会場の人たちも続いて呼ぶ。すると奥の方からもの凄いスピードでイルカが二頭現れた。

 そして目の前でクルッと曲がったと思ったらいきなり水しぶきをかけられた。

 会場も大騒ぎだ。


 「うわー!イルカってすごいんだねー!まだ最初なのにびしょびしょだよー。」


 「飛ばしていくなー。後々が楽しみだ。」


 ちゃんとカッパを着ているとはいえ結構な量だったので毎回この量が来ると考えると...。

 これ、役に立つか...?


 それからしばらく輪くぐりや回転などイルカたちが様々な芸を披露していった。

 するとアナウンスのお姉さんが


 「じゃあここからは観客の皆さんにも参加していただきましょう!お客さんの中でイルカさんたちと遊びたーい!って人はいるかなー?」


 「俺たちも上げてみようぜ。」


 「そうしよ!」


 俺たち以外にもたくさんのお客たちが手を上げている。


 「たくさん立候補していただきありがとうございますー。それじゃあ...一番前の列にいる若い男女お二人!どうぞこちらへ!」


 「お、俺たちか?」


 「やった!早くいこ!」


 そう言っていそいそとステージに上がる。

 早速お姉さんが話題を振る。


 「じゃあ順番に自己紹介してもらおうかな。お名前を教えてください。」


 「えっと、柳沢優一です。」


 「薄野有希乃です。」


 その後関係やどこから来たのかなどを聞かれ終わった後に飼育委員のお兄さんから簡単に説明を受け、早速体験を始める。


 有希乃がオスのしん君、俺がメスのめいちゃんだ。


 「ほっ!」


 イルカたちも賢いので俺たちの慣れないサインでも着実に芸をこなしていく。

 さあ、デートにハプニングは付きものということで――え?そのタイトルもう聞いた?そういうのは思っても口に出さないのが紳士ってやつだぜ。――最後、芸が終わって席に戻ろうとしたとき、しん君がよほど有希乃のことが気に入ったのか指示をしていないのに間近で大ジャンプをかました。するとどうなるか、分かるよな?


 「えっ?」


 ドバーン!


 ...カッパも意味をなさず二人ともびっしょびしょなわけ。会場は笑いの渦。なんとかアナウンスのお姉さんの機転で大事にはならなかったが、とりあえず控え室に通してもらって服を乾かした。

 

――その時の感想は有希乃の下着が少し透けてて興奮した。とだけ言っておこう。

 

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