第15話 勉強会の後2

 ユウ君が帰ってしばらくして、お姉ちゃんが帰ってきた。


 「ただいま~。」


 「お帰りお姉ちゃん。」


 そう、そこまでは良かった。そこまでは。


 「ちょっと聞いてよ恭香!有希乃ったら例の男の子を連れてきたと思ったら――」


 「あー!あー!」


 「ちょっとゆき。聞こえないじゃない。少し静かにして。」


 このおしゃべりな母親があのまま黙っていてくれるはずも無かったのだけれど。

 今ばかりは母親をどこかに拉致してやりたい。それか大阪湾にでも沈めるか...?

 そんな不穏な考えが頭をよぎるがカット。危険極まりない。


 「へぇ...ゆきも意外と大胆なのね。」


 「あんまりからかわないでよぉ...。」


 「ごめんごめん。でもこんなことお父さんが聞いたらどうなることやら。」


 まだお父さんは帰ってきていないが帰ってきた頃にはお母さんがハリネズミも驚くほどのスピードでお父さんのところへ行って同じことを話すだろう。

 そうなれば過保護なお父さんのことだ。きっとユウ君のことをあれこれ聞いてくるに違いない。さすがにそれは耐えられないかもしれない。


 「ちょっとお母さん、お父さんには今日のこと言わないでよ!?」


 「さすがに分かってるわよ。娘の恋路こいじを邪魔するわけには行かないもの。」


 「でもずっと黙りっぱなしっていうのもどうかと思うけど...。」


 お姉ちゃんの言うことももっともだ。

 それはそれで急に知らされたお父さんも気の毒だろう。私もそこまで隠し通そうとは思わない。


 「そうね。お父さんには私からうまいこと丸め込んでおくわ。」


 「うん。お父さんには悪いけど今はそうして欲しい。」


 「ゆきも早いとこ既成事実作っちゃいなよ~。」


 「ちょっ!お姉ちゃん!何てこと言うのよ!」


 「その割にはあまり嫌そうじゃ無いのね~。」


 ...確か家のガムテープはそろそろ切れるから近いうちに百均でも行って新しいの買っておかなきゃな。明日にでも行こう。

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