第9話 姉と私

 あの後少々浮かれた気分で家に着く。

 言えた。やっと言えた。長年ため込んできたものがプシューと抜けていくような心地よさがある。今なら何でもできそうな気がする。

 そう思いながら玄関のドアを開ける。


 「ただいま~。」


 そう言って自分の部屋に荷物を置いて着替える。手を洗おうと洗面所に行こうとすると、


 「あら、お帰り。ゆき。」


 「ただいま。お姉ちゃん。」


 私には恭香きょうかという大学二年のお姉ちゃんがいる。歳は離れているが周りからは双子みたいだと間違われるほど私と似たような顔立ちをしている。

 昔からとても頼りになって今の私があるのはお姉ちゃんのおかげと言っても過言ではない。

 お姉ちゃんは関西の有名私立大学に通っていて心理学を学んでいる。たまにお姉ちゃんの友達がうちに遊びに来るけどたまに私も相手にしてもらっている。


 「ねぇゆき。今日何かいいことあったでしょ?」


 「へ?何で分かるの?」


 「顔に書いてあるもん。今日は幸せな1日でした~って。」

 

 「そ、そう?実はね今日――」


 私は今日あった最高に幸せな出来事をお姉ちゃんに話す。


 「――ふーん。意外と早かったのね。」


 「え!?何その反応!?」


 「だっていつからあんな感じなのかは知らないけれどこの前なんて部屋でずっと上の空で――」


 「あーあのときの話ね!分かった!分かったから!もうその話は掘り返さないで!」


  ほんとに恥ずかしい...。早く忘れてくれないかな~。


 「ま、少し心配だったけれど成就して良かったわね。じゃ、私は部屋に戻るわね。」


 「うん、ありがとう。」


 あれ?そういえばお姉ちゃんのこういった話は聞いたことがないけれど...。一体そっちの方はどうなっているんだろう?いつか機会があったら聞いてみよう。


 

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