第8話 妹と俺
あの後それぞれの帰路につき、俺は少しルンルン気分で家に着いた。
「ただいま~。」
「あ、お帰りお兄ちゃん。」
こいつは妹のすみれ。目元がキリッとしている所は俺にそっくりで髪もさっぱりしたショートヘアーにしている。女の子にこの言葉はどうかと思うが格好いいと言われる部類、いわゆるボーイッシュってやつだ。
基本平日は毎日バドミントンの練習で俺が帰ってくる前にいることはほとんどないのだが今日は珍しくお帰りが早い。
「お?すみれか?今日練習はどうした?」
「今日はなんか練習場所を他の団体が使うとかで早く終わっちゃった。」
「そうだったのか。」
「それよりもさ、お兄ちゃん。なんか今日いつもより機嫌がいいね。何かあった?」
「え?い、いや、何も?」
今ここで彼女ができたなんて言ってしまおうものならこれからしばらくは家族間の話題がそれ一点になってしまう。そんなの高校に入りたての自分にとってはかなり恥ずかしい。穴があったら入りたいなんてレベルでは済まない。自分でブラジルまで掘るレベル。
「お兄ちゃん何か隠してるのバレバレ...。まぁ言いたくないのなら無理に聞かないけど。」
「そうしてくれ。」
さすが我が妹。察しが良くて助かる。
そして自分の部屋に戻る。
「めんどくさいし電話じゃなくてメッセージでいいか。」
なんだか恥ずかしくなってきた俺はメッセージで晃德に送ることにした。
まだ既読はつかない。あいつのことだ。きっと勉強してるに違いない。そう思うとやっぱりメッセージで送っておいて正解だったな。
――ふと思う。
「有希乃は今頃何してるんだろうな~」
考えれば考えるほど気になってくる。今頃彼女は今日のことを嬉しそうに話しているのだろうか。それとも俺みたいに心の内に秘めているのだろうか。
「(――ってなんだかストーカーみたいじゃん。やめよ。)」
と思い俺は軽く頬をたたき、夕飯の香しい匂いにつられて部屋を出た。
今日はきっと肉料理だな。
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