第5話 黄昏時の校舎で・・・

 朝同じクラスの美少女とぶつかってしまった後、これといった出来事はなく普通に一日は進んでいった。

 結局あのまま薄野さんとは何も話せずじまいだからな。放課後手紙の場所に行く前に一言くらい謝っておくのが筋か。

 そんなことを考えているうちに今日の授業が終わりを告げる。


 「じゃあ今日はここまで。来週月曜日までに各自興味のある日本の偉人について調べておけよ~。」


 そう言って日本史の先生はそそくさと教室を出て行った。

 俺も早く行かねばと思ってあたりを見渡すも薄野さんの姿が見当たらない。

 

 「あれ...帰っちゃったのかな...。」


 もう少しあたりを見渡してみたがやはりいない。


 「おーい優一。今日行くんだろ?俺は先に帰ってるから結果だけ聞かせてくれよなー。」


 と晃德が話しかけてきたと思ったらすぐに身を引いていった。

 全くお気楽なやつだ。こっちの気持ちも知らないで。


 「...と少し時間を食いすぎたか。あまり待たせるのも悪いから早く行かないと。」


 そう思い片付けを済ませ、例の手紙に指定された場所に向かう。

 俺が屋上へ続く階段を上ろうとしたとき、ふと人影が見えた。

 きっとその人が手紙の差出人だろう。

 あれ?なんか知ってる人のような...?

 俺は不思議がりながらも意を決して階段を上る。


 「...!君は...!」


 小動物のような愛くるしい背格好、セミロングの長い黒髪、幼さの残った顔――


 ――そこには今朝ぶつかった小柄な美少女の姿があった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る