夢
暗闇の中で、意識が形を成し、揺蕩う。上が下で、下が左で、左が右で、右が上で。
生とは死であり、死とは始まりであり、終わりとは生である。
形あるものは未熟であり、未熟であるが故に形を成す。
『――
闇の中に灯るは、緑の輝き。弾けるような光が集まり、一つの形を産み落とす。
シルエットだけのそれは、まるで蓮を被った人間のようで。
ぼんやりとだが、体に纏っているのは袈裟だろうか。
その姿を見ていると――心なしか、彼女と話をしている時とは、真逆の感情が湧いてくる。
一番先行するのは、不安。見ているだけで生命の、あるいは精神の危機を感じる程の不安だ。
『汝、この世の全てを暴く真理を求むるか。無知より脱却し、全てを解き明かす叡智を求むるか』
――そう言われても……どうだろう。今は必要ないというか。
『知を得るを拒むか。得られたならば、お前の望み、思うが儘ぞ』
――そういう訳じゃないけど。
『ならば、
――それが本当なのか、分からないから。
『――成る程。斯様に弱き身でありながら、抗う力を持つか。それもまた、良かろうて』
『しかし、ゆめ忘るべからず』
『汝は所詮、矮小なる身である事を』
『この宇宙の大いなる流れに身を任せて動くだけの、塵芥の一粒に過ぎぬ事を』
緑の煌きが消えた後、静寂に包まれた闇の中で、小さな光が灯った。
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