第16話 どうですか?
「大丈夫ですか?」
「えっ?」
すると深く瞼を閉じて、ほんの少しでも思考を休ませようとした最中に、声がかかる。
全く誰だと思いながら、瞼を開くとそこにはあの生徒たちの先生。すなわち、初見で相当暴走した女性教師だった。
「……えーっと、何でしょうか?」
「え、えっと、お疲れなんでしょうか?」
「ま、まぁ……そんな所で立っているのもなんですし座ったらどうです?」
「あ、すみません」
「いえいえ」
どちらかと言うとこっちが顔上げるの辛いだけなんですけど、そう日本人らしい謎の優しさと感じてくれるのならそれはそれで良い。
「で、何でしょうか?」
「え、えっと、ですね」
すると女教師殿は緊張するようにカチ、コチ、ぎこちない動きになっている。
けれどどこか緊張している反面、もじもじしているように見えるのは気のせいだろうか。いや、気のせいだろう。
「今夜、空いていますか?」
「はい?」
「えっと、今夜、空いていますか? 空いていたら~、お食事などぉ………と思いまして」
「今夜ですか。予定は無いですね」
ちなみに急遽入る予定という名の残業は除く。
「で、では、お食事できるんですね!」
「あぁ、まぁ」
なんだぁ? 今どきの学園の人たちは容赦なく図書館で大きな声で話すことが流行りになっているの?
ここ一応、公共の場なんだけど、周りの人に変な目で見られるよ。この人本当に、あの学園の教師かな?
「で、でしたら連絡先はここに書いていますので、時間になったら呼んでくださいね!?」
「……あぁ、はい」
そう言われ女教師から、小さな紙きれを貰うと、女教師は一目散に逃げるかのようにその場を去っていった。
「どうすればいいんだよ。これ」
自分は渡された紙きれを握りながら、この状況をどうしようかと考えた。
別段、飯を食いに行きたくはないというわけでは無い。相手が奢ってくれるのなら、なおさら行かない理由はない。だが、こちらとて面子と言うものがある。
「行けるか分からないけど、金はこっち持ちだよなぁ」
あまりお金を使う事は無いけど………残業が無い事をただ願うだけだった。
この仕事は住み込みアリ、残業アリの国家公務員の仕事場だから。
「ま、部下にさっさと帰らせればいいだろう」
そんな呑気な事を言いながら俺はその場を去った。
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