第15話 女子高生第二号

「で? その後ろにいるのは?」

「えっ?」


 先程から俺の視線の中に入っている女子高生の後ろにいる女子が、さっきからじっと話しかけていいかな、かなかな? という目で見てくれるからめちゃくちゃ気が散る。


「えっ? あぁ、彼女紫藤 由良しどう ゆらさん。私の友人よ」

「はぁん」


 そっすか、女子高生第二号さんですか。先程の教師殿ほどではないがふわふわとした雰囲気だが、その制服の着方などを見る限り案外まともさんかもしれない。誤字訂正『真面目さん』だ。


 女子高生一号の馬鹿『真面目』という程ではなく、普通の『真面目』。茶色い髪のストレートに華奢な体格は、どこか人を引き付ける力のようなものを感じた。


 いやぁ、無駄に変なことを考えてしまえば、何か察しられるからなぁ。女性の強みだよなぁ。そこ、


「………あっそ」

「興味無さそうね」

「無さそうじゃない。無いんだ」

「はっきり言うわね」

「でしょ」


 あはは、と笑う俺と女子高生一号だが、自分は気付いていた。


 彼女の目、笑ってねぇな、とこと。


「で、御宅も少しぐらいは話したらどうだい?」

「えっ、えぇと」


 女子高生一号の後ろで俺らの会話を聞きながら、にっこりと眺めている女子高生二号に対して話しかける。

 女子高生二号は自身に来るとは分かっていなかったのか、俺に話しかけられると驚いたような顔で慌てふためく。


「どうしたよ」

「え、えっとぉ……」

「?」


 すると女子高生二号は徐々に声を小さくしていき、俯いてしまう。そう、俯いて声が小さくもぞもぞ、何言っているのか分からない。最近、歳で耳も少し聞きにくいためか、本当に何言っているのか分からない。


「すまん、もう少し大きな声で言ってくれないか? 最近耳が遠くて」

「おじいちゃんなの?」

「いや、もう年齢的にはおじさんだけどぉ……」


 実際にうら若き少女にそう言われるとダメージ来るなぁ。この感覚、高校生で幼稚園児たちからおじちゃん、って言われて以降だよ。無垢の恐怖。


「って、そうじゃなくて。何してんのよ、あんた紫藤さんが怯えているじゃない」

「あー、はいはい。ごめんなさいね」

「そうじゃない!」

「絹宮さん、ここ、図書館図書館」

「!!」


 ありゃありゃ、注意されてやんの。


「静かにしろ、小娘ぇ。ここ一応、公共の場だぜぇ?」

「わ、わかっているわよ」


 女子高生一号は、小さな声で俺にそう言って来ると、先程の大きな態度がしゅんと小さくなる。


 よしよし、これで良いというものだ。暴れる獣も大人しくさせるために鎮静剤を打ち込むだろう? あれと同じようなものだよ。


「で? 結局どうしたんだい?」

「…………さっきも言った通りに童話のコーナーを教えなさいよ」

「…………童話ならこの道まっすぐ行って右に曲がれば第十四コーナーがある。その近くの道をまっすぐ行けばアダルトの童話ならたくさんあるよ」

「……………それって本当に歴史に関する御伽噺なんでしょうね」

「だれがこんな所にエ〇本なんか置くかぁ。そこにはホラーな童話しか置かれていねぇよ」


 一体、何考えてんだこのマセガキ。


 こんな本部から離れた辺境の所に保存できねぇだろ。


「だ、誰もそんなことは言っていないわよ」

「……………知らね。そんあことよりさっさと行ったらどうだい?」

「って、わっちが欲しいのは歴史とかに関する御伽噺!」

「はいはい、静かに静かにここ図書館」

「…………ならあるの?」

「ダークな内容だからなねぇ。あるよ」

「…………そう、わかったわ。行きましょ、紫藤さん」

「う、うん」


 女子高生一号が二号を引き連れて、俺が言ったコーナーへと向かった。


「ふぅ、休める」


 あの小娘共の対応で忘れていたが、最近は書類処理で疲れていたこと忘れていた。


「最悪」


 それに被るように、この施設案内だ。体に一気に負担と疲労がかかり、身体が溶ける様にだらしなく椅子に深くもたれ掛かかった。

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