第13話 余計な一言
あの任務を渡された数日経ち、任務実行の日となった。
といっても、大体、一週間近くだけ経っただけなんだけど………。
「松原さん、来られましたよ」
「あっ、はーい」
聖さんに呼ばれ俺は呼んでいた本を机の上に置いとくと、そのまま司書室を出る。
今となって感じる長い廊下を歩き続けると、一階のエントランスには同じような制服を着ていた団体がいた。
「懐かし」
俺はそう呟くと案内のためにすぐさま、一階へと降りると、ちょうど学園の教諭が何か説明している途中だった。
「すみません。待ちましたか?」
「あっ、いえ、大丈夫です」
若い。
一目見た思った感想がそれだった。自分より身長が低く可愛らしい顔、栗色の髪に大きな胸。これだけでも男性の保護欲を掻き立てられる存在であった。
まぁ、自分はストライクゾーンじゃないから。別に可愛い小動物ぐらいにしか思わない。ジャンル的には犬の類。ポメラニアンには少し近い。
「所で、お名前を聞きたいのですが?」
「あれ、聞いていなかったのですか?」
「えぇ、すみません」
多分、俺のせいだろうけどそんな話は聞いていなかったような気がする。………………右から左へ聞き流したのも含めて。
「私は
「あっ、はい。こちらこそお願いします」
タユンタユン、と揺れる胸に視線が行きがちなのは男性の性なのだろうか、こういう時に雄の本能というものは面倒くさい。
その証拠として、
「おい、見ろよ」
「うへ~、エロ」
青春期真っただ中の男子生徒たちはこの女教師に視線が釘付けで、何人かはモゾモゾとしていた。まぁ、俺も男性なのでそれが何のことを指していたのか分かっていた。
はぁ、マセガキめ。
「え、えっと、まず顔を上げてください」
先ほどから顔を下げている女教師の頭を上げさせる。じゃなければ、話の一つもできやしない。
「わ、ご、ごめんなさい」
「いいえ」
さっきと同じように頭を下げようとする女教師を止めると、やっと自分の自己紹介に入れる。
「今回、案内、ということになるのかな? まぁ、案内をさせていただく司書の松原 命都と言います」
「あっ! え、えっと………」
俺はそう言いながら頭を下げると、何か戸惑うような声が女教師から聞こえていた。分かる。なぜなら、今から案内する人が学内でも噂になっている『問題司書』なのだから。そんな人に急に案内なんかされるんだ。気まずいに決まっている。
「あ、気にしないでください。一応、これも職務なんで」
頭を上げ、そう弁解しとく。
「………あぁ、えっとすみません」
「はい? なんでしょうか?」
「先生って………教員歴、一体、どのぐらいでしょうか?」
「………………」
あぁ、なんだが半ば引いたような顔でこっちを見てくる。まぁ、そうだよね。所見の人に言われたくないもんね。普通の人がきいたら、職歴聞いて、長くなければ馬鹿にする古臭い人間だよな。
「………何か意味が?」
「それ次第で自分が言うアドバイスが変わります」
「えっ、ではまだ一年です。このクラスが私が持つじゃじめてのクラスです!」
「………あー、そうですか。なら一つだけアドバイスが」
「な、なんでしょうか!?」
あぁ、そういうキラキラした目で見ないでください。今から言うのはそんなの関係ない最悪な一言ですから。
「結婚は早くした方が良いですよ」
「えっ」
まぁ、そう言う反応するよね。
「「「!?」」」
「えっとですね? 司書になるのもなんですが、司書関係の教師ってめちゃくちゃ出会いないんですよ。だから、今のうちに恋愛とか頑張った方が良いです」
「………………」
「ごめんなさい」
本当不適切な言葉で申し訳ない。教師という職業は他と比べて本当に出会いがないんだよ。これ、学生時代の先生が言ってた。
「えっと、大丈夫ですか?」
「え、えぇ」
「………これ、気付くの大体三年ぐらいから感じますから気を付けてください」
「はい」
俺のアドバイスがそれほど刺さったのか未だにがっくりしている女教師は放っておきたいが、自身の信条故にこのまま放っておくということはできない。
「えっと、大丈夫ですか?」
「………松原さん」
「何でしょうか?」
すると女教師は顔を上げずに話しかけてくる。
「今、彼女さんとかいますか?」
おや、雲行きおかしくなったぞ?
「いませんが………」
俺はこの返答をしながら、思った。
最悪の選択をしたかもしれない。
「なら付き合ってくれませんか!?」
「「「!?」」」
「ちょっと、何言ってんの!? いや、それを起こすようなこと言った自分も悪いんですけど!?」
その答えはまさに最悪な答えで、女教師はいきなり俺に抱き着いてきた。さすがに俺も悪いと思いましたけど!?
「な、なら! お食事でも!」
「あ、えっと、あ、え、えっと、あぁ………」
「ちょっと先生、落ち着いてください」
ペチンッ!
「あぅ!」
すると後ろから昨日あった………名前が思い出せない。まぁ、女子高生が女教師のことを叩き、引っ張って俺の体から引きはがしていく。
「先生、貴女、このクラスの担任でしょう。その担任が慌ててどうするのですか」
「す、すみません」
「………………」
あ、やっべ。俺完全に蚊帳の外。
昨日会った女子高生はそのまま女教師にへと説教を垂れ流し始め、俺はそのような状況を見ながら茫然としていた。
「はぁ、貴方も変な事を言わないでください」
「はい」
大丈夫。そのことはこの身を持って実感して理解しましたから。
今後、言葉については控えようかな。こうなるかもしれないでし。…………まぁ、あの人なら変な人につかまんない限りはいい人に恵まれるだろうと思う。いざとなれば、海外から紹介でもしとこうかな。
「で、では、案内よろしくお願いします」
「はい」
俺がそう答えると、女教師さんは咄嗟に生徒の方に向かいクラスの人たちをまとめ上げている。
「………行かなくていいのかい?」
「…………」
だが隣に立っているあの女子高生は女教師についていこうとせず、ただじっとこっちを見る。
「絹宮さ~ん! 来て下さ~い」
「…………わかりました!」
その女子高生が女教師に呼ばれると、数秒か俺のことをじっと見ると、すぐにクラスの集団に向かって走り出した。
さぁてと、俺ももうそろそろ動こうかな?
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