第4話 ママスと遊ぼう
俺のママス、元男爵令嬢。でもまあ辺境の男爵の3女なのでそれ程珍しい訳でもなく、特別綺麗って訳でも無く、見た目は唯の小柄なオバちゃんなのだ。でも俺のママスは魔法が使える、これは平民からすれば凄い事なのだな、それに読み書きも出来ちゃうから辺境の村一番の才女でも有るのだ。でもまあ魔法が使えると言っても、指先にロウソク程度の火が出せたり、指先からコップ一杯の水が出せる程度なので世間一般の魔法使いからすればショボイのだな、王都に居る高位の貴族の中には本当に攻撃魔法が使える者も居るらしいのだが俺は見たことが無かった。
「ゴールド、ママ暇だわ。パパスとばかり遊んで居ないでママスと遊びましょう」
「う~む、俺は忙しいのだよ母ちゃん」
前世の親とは違って今世の両親は俺に物凄く構うのだ、そんな気の良い両親の為に村を発展させようと頑張っているのだが、何せ辺境の村は暇なのだ。男衆の為に弓矢の射的場や相撲の土俵等を造ってやったので、男衆は毎日喜んで遊んでいるのだが、村の女衆はどうやらそんな野蛮な遊びはお気に召さない様なのだ。
「パパスばっかり遊んでズルいわ! ママスにも面白い物作ってよゴールド」
「う~む・・・・・・面白いものねェ~」
当たり前の事だが男と女では面白い事が違うようだ。男集は相撲や弓矢で喜んで遊んで居るのだが、女衆にはそれ程ウケない。では何をすれば良いのかと言っても俺は男なので良く分からない、そもそも女と遊んでいた経験が無い様な気が・・・・・・
いやいや俺がモテ無かった訳では断じて無い、幼少の頃は男衆と遊ぶのに忙しくて女衆と遊ぶ機会が無かっただけなのだ。仕方ないので昔を思い出してみると、どうやら女集は文化的な遊びを好んでいた様な気がする、勿論気がするだけなのだが思いつかないのでしょうがない、[当たって砕けろ!為せば成る!後は野となれ山となれ!]俺の座右の銘が浮かんでくる、取り敢えずやってみれば良い、間違っていたら謝まれば良いのだ。
「ママス! こんなものはどうだろう?」
「何それ?」
「五目並べって言う頭脳ゲーム」
何も浮かばない訳では無いが、簡単に出来るのはこんなもの。紙にマス目を引くだけの簡単な作業なのだ。そして紙が無くても地面にマス目を引けば屋外でも出来るって言う万能性、更に言えば五目を四目に変えれば勝負が早くなりルールも簡単になると言う神がかった遊びなのだ。
「へ~、面白そうね。やってみましょうゴールド」
「イエス、マーム」
ルールは至極簡単なのでママスは直ぐに覚えた、そしてヒステリーを起こした。
「何故勝てないの!」
「それは秘密です」
五目並べは先手が勝つ、ミスさえしなければ先手が圧倒的に有利な遊びなのだ。将棋や碁なんかもそうだから、先手って下手な方がやるのが一応の決まりなのだ。
いくらやっても俺には勝てないのでママスはパパスと勝負することにした様だ、ワザと負けてやろうかとも思ったが、遊びって奴は本気でやらないと面白くないので俺はママスに負けてやらなかったのだ。
そして夕食の後で、パパスが俺の所にやって来た。
「ゴールド! 五目並べの勝ち方を教えてくれ。このままでは男としての威厳が無くなってしまう」
「しょうがないな~」
俺に負けて悔しかったママスは、パパスと五目並べをして遊んでいたのだが。ママスは男爵家の令嬢、そしてパパスは平民の5男で食うに困って兵士になった男。元々の自頭の良さにかなりの開きがある様で、連戦連敗、なんと20連敗なのだそうだ。そして遊びとは言え勝負事、本気でやって負けると悔しいのだ、そして益々のめり込むって言うのが本気の遊びなのだ。その気持ちは良く分かるので、適当にコマを置いては勝てないこと、常に何手か先を読みながらコマを置いてゆく事を教えてあげた。
「な~んだそうだったのか! 先を読みながら攻める! これは剣術と同じではないか、これなら勝てる!」
すこし教えたらとても良い顔をしてパパスはママスの所へ五目並べの紙を握り締めて走って行った。そして簡単にママスにひねられ泣いていた、当たり前だ、そう簡単に先読み出来るわけはない、頭も筋肉も使わないと育たないのだ。
その後ママスが五目並べを村に広げていったのだが、紙は貴重品で結構な値段がする。そこで俺は気を使って五目並べの親戚、オセロ(リバーシ)をママスに造ってあげたら凄く喜んでもらえた。ついでに村にたまに来る商人に売りつけたら結構売れた、そして特許なんかない世界なので真似されて俺は大金持ちに成るという夢は無残にも砕かれてしまったのだ。
「ぐぬぬぬ・・・・・・特許が無いせいで金持ちに成損なうとはな!」
異世界ラノベなら俺は大金持ちに成って、今頃内政チートをやってるハズなのだがこの世界は世知辛かった。すぐに資本力と政治力の有る貴族に俺の造ったゲーム盤は真似されてしまったのだ。オマケに俺は発明者なのにそのゲーム盤を造ることが違法にされてしまった、貴族ってズルい奴だったのだ。そしてそれを臆面もなくやった貴族が俺の領地の寄親の寄親、男爵の親分であるズール伯爵だった。
「今に見ていろ伯爵め! 必ず頭を踏んづけて笑ってやるぞ!」
等と怒ってみたものの、よく考えたら五目並べもオセロも本当の意味では俺の発明ではないので、すぐに俺の怒りは収まったのだった、しかし、貴族はズル賢いと言う知識だけは得られたので凄く良い経験に成ったのであった。この小さな出来事が後に生きてくる。
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