第93話 世界樹の島に到着なの。

 フリーザ商会の船に便乗して概ね二週間、レイニィは世界樹の島に到着した。


「ふー。やっと着いたの。揺れない大地って素晴らしいの」


 船から岸壁に下りたレイニィは大きく伸びをした。


「お疲れ様です。レイニィ様」


 荷物を持ったスノウィがその後に続く。


「やっとと言ったが、普通なら一月以上かかるのだぞ」


 レイニィを窘めるエルダであったが、本人も内心では船旅に飽きていた。


「ほんと、びっくりだよな。二週間で着くなんて」


 剣を携えて一番最初に下りていた護衛のアイスも話に加わる。


「これも全て、神であるレイニィ様のお陰です。ありがたいことです」


 フリーザ貿易のフリージィは、既に、レイニィたんもえーの変態から、レイニィの狂信者にクラスアップしていた。どちらにしろ、危ない奴に変わりはなかった。


 なぜ、これほど早く着いたかといえば、レイニィの魔法のお陰である。

 レイニィ達が乗ってきた船は、大型の帆船であった。

 風がなければ進むことができない。

 そこでレイニィは、魔法で帆に風を当て続けたのである。片時も休みなく。


 普通なら魔力が枯渇してそんなことはできないが、無限の魔力があるレイニィならば全く問題なかった。

 そのため、船は常に最高速度で進み続け、その結果、通常の半分の日数で世界樹の島に到着したのである。


「あれが世界樹なの。大きいの」


 レイニィは遠くに見える巨大な樹を見て感嘆の声を上げた。


「まだ、ここから馬車で二日かかりますよ」

「え、まだそんなに遠い所にあるの?」


「どんだけでかいんだよ」

「今日は宿で休んでもらって、明日の朝、世界樹に向けて出発することになります」


「はーいなの。でも、宿に行く前に街の様子も見てみたいの」

「わかりました。では、私が案内しますね」


 レイニィ達はフリージィの案内で港町を見て回った。

 港町ライズに比べると小さな港町であったが、ライズでは見かけない果物がたくさん売られていた。

 それと、アクセサリーや置物などの木工品が目についた。

 それらのほとんどが世界樹を材料に作られていた。


 街の見学を終えて、レイニィ達は、フリージィが用意した宿に泊まることとなった。

 宿の夕食では、街で見かけたさまざまな果物がふんだんに出された。


「この果物も全て世界樹から取れた物なのですよ」

「へー。そうなの? なにか想像がつかないの」


「世界樹は一本の木なのだが、枝ごとに違う実がなる。一説には、進化の木といわれ、下にある程古くからある種類で、上に行くほど最近進化した物だといわれている。全ての植物が世界樹の子孫だともいわれているな」


 フリージィがレイニィに果物の説明をすると、エルダが世界樹について解説を加えた。


「お嬢様が必要なのは世界樹の枝なのだろう。どの枝でも構わないのか?」

「うーむ。どうなの? 先生」


 アイスからの質問に、分からなかったレイニィはエルダに振った。


「目的が魔法を使うときの杖の材料だからな。出来るだけ上の枝がいいな。上の枝程魔力の通りがいい」

「そうなの?」


「そうなると木登りすることになるのか」

「え、木登りなの?」


「心配しなくても、簡単に登る方法もありますから大丈夫ですよ」

「簡単に登る方法があるの?」


「それは着いてからのお楽しみです」

「フリージィさんは意外と意地悪なの」


 和気あいあいと夕食を済ませ、二週間ぶりにゆっくりベッドで寝たレイニィは、翌朝、世界樹に向けて馬車で出発したのだった。


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