第60話 モーターを作るの。

 次の日からレイニィはモーターの作成に取り掛かっていた。


「どうしたの、このミスリル? こんなに沢山!」


 ミスティがミスリルの延棒の山を見て驚いている。


「モーターの材料として、元勇者にもらったの」

「ほお。随分気前がいいでは無いか」


 エルダも、ミスリルの量に感心している。


「気前がいいって量じゃないと思うけど……」

「気にする必要ないの。モーターにはそれだけの価値があるの」


「そんな凄いものなの?」

「それは楽しみだな」


 ミスティとエルダはレイニィのやることに興味津々である。


「前に、魔石とミスリルがくっつくことがあるって聞いたの。それを再現するの」


「それは、魔力を大量に注ぎ込めば再現できるが、実用的ではないぞ。魔石から魔力を供給するとすぐに空になるし、魔術師が供給するなら、自分で魔法を使って動かした方が楽に出来る」


「それを聞いて安心したの。魔力を込めれば再現できるなら、これからやる方法で、効率よくできるようになる可能性が高いの」

「少ない魔力で再現できるなら、いろいろと役立ちそうだが――」

「魔力を大量に込めば、そんなことができたのね? 私、知らなかったわ。まだまだ勉強不足ね」


「まずはミスリルの針金を作るの」


 レイニィは魔法で針金を作っていく。


「魔法って便利ね。私も使えたらよかったのに――」

「ミスティもエルフの血が流れているのだろう。少しくらいなら使える可能性があるのではないか?」


「そうかしら? 考えてみたこともなかったわ」

「昔は錬金術師とは魔術が使える者がなる職(ジョブ)だったからな」


「そうだったのですか。なら、私にも可能性があるかしら……」

「やる気があるなら指導してやるぞ」


「お姉ちゃん。頑張ってみるの。あたしも教えてあげるの」

「なら頑張ってみるわ。ご指導のほどよろしくお願いしますね」


 話をしている間に、ミスリルの針金は完成した。


(これを何かで被覆して絶縁しなければならないけど。

 エナメル線なんてどうやって作るんだろう?

 鉄なら絶縁出来るだろうけど、魔力を全く通さなかったら、引きつける力も遮断しちゃうわよね――。

 ビニールテープなんて物はないし。

 取り敢えず。布に糊を付けて巻き付けてみるか)


 レイニィは布を細長く切って、針金に巻き付けていく。


「これをミスリルの心棒に巻き付けるの。これがコイルなの」


 出来上がった被覆された針金を、ミスリルの棒に巻き付けていく。


「これで、この針金に魔力を流すの。すると、この棒の先に魔石がくっ付くの」


 レイニィは魔力を流し、魔石をミスリルの棒に引き付ける。


「凄いわ! 張り付いたわ!」

「張り付いたけど、レイニィが魔力を流していたら、効率が上がったのか判断できん。お前は規格外だからな」

「先生、変わってみるの」


 今度はエルダが魔力を流す。


「お。確かにわずかな魔力で引き付けるな。これなら魔石でも余裕で動作するな」


「後は、これを三つ作って、タイミング良く切り替えて、魔石を付けた棒が回転する様にするの」

「棒が回転する? よくわからんが、目処がついたのだな?」


「間違いなくモーターはできるの!」

「レイニィ、わかるように、これに絵を描いてね」

「はいなの!」


 レイニィはミスティに言われて、モーターの設計図を書き始めるのだった。


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