第49話 家に帰り着いたの。

 なんだかんだで、一月以上家を空けていたレイニィは、一月ぶりに港町ライズの屋敷に戻ってきた。

 家族が全員で揃ってレイニィを迎える。


「レイニィ、お帰り」

「ただいまなの。お母さま」


 母親のウインディが、レイニィを抱き寄せる。


「無事で何よりだったな。目的の物は手に入ったのか?」

「はいなの。お父さま。ばっちりなの」

「そうか。それはよかったな」


 父親のゲイルはレイニィの頭をポンポンと叩く。


「エルフの里はどんな所だった?」

「クールお兄ちゃん。エルフの家は木の上の小屋だったの」


「そうか。一度見てみたい物だな」

「そんな事より、スライムの洞窟はどうだった?」

「そんな事とは何だ、ドライ。住まいは大切な事なんだぞ!」


「ドライお兄ちゃん。洞窟の話はまた後でするの」

「おお、そうだな」


「レイニィお帰り、お土産があるわよ」

「お姉ちゃん、ただいま。お土産があるの? お土産があるのは、あたしの方なの。お姉ちゃんはもらう方なの」


「チッチッチ。今回は私からレイニィにあるのよ」

「本当なの?」


「ジャジャン。これ何だ!」


 ミスティは隠し持っていた物をレイニィに見せる。


「え。えーーー! こここれ、これ。透明なガラス! お姉ちゃんできたの?!」

「そうよ。綺麗でしょ」


「凄いの! 凄いの! これで色々出来るの。お姉ちゃんありがとうなの!」


 レイニィはミスティに飛び付いて喜んだ。


「なに、透明なガラスができたのか?」

「あ、エルダさん。これですよ」


「ウオー! これが透明なガラスか?! 完全に向こうが透けて見えるな。素晴らしい。これで色々できるな!」


「何故、エルダさんもレイニィと同じ事を言っているの?」

「まあまあ、賑やかね。ここで立ち話もなんだから、リビングへ移動しましょう」


 それからリビングで、暗くなるまで家族の団欒は続いたのだった。


 翌日からレイニィは精力的に動いた。


 先ずは温度計を改良し、ガラスで出来た棒温度計を作り上げた。

 魔法を使えば、ちょちょいのちょいである。


 次に湿度計は、以前作った毛髪を使ったものではなく、棒温度計を利用して乾湿計を作った。

 乾湿計は温度計を二本用意し、片方はそのまま、もう片方にはガーゼ等を巻き、湿らせておく。

 そうすることにより、湿らせた方は水分が蒸発するときに気化熱で温度が下がるので、二本の温度計の温度差から湿度が計算できる。

 これができたことにより、毛髪が必要なくなり、姉のミスティが禿げる心配がなくなったと、レイニィは安堵したのだった。


 気圧計もガラス管を使って、きちんとしたものを作った。構造は同じであるが、スライムが入った桶にアントの足が差してあるものに比べたら、いかにも測定器という物ができあがった。


 エルダも負けじと照明器具の開発に着手した。こんなことならRGBスライムをもっと取ってくればよかったと悔やんでいた。


 そして、レイニィ達は、温度計や照明器具を売る店を街に出すことになった。


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