第37話 北の森に着いたの。

 首都シャインを出発して六日目、予定より一日遅れでレイニィ達は北の森に到着した。


「北の森に着いたぞ」

「エルフの里はどこなの?」


「うーん。そうだな。あの辺りからがそうだな。ほら、最初の家が見えて来たぞ」


 エルダの指差す方を見ると、木の上に小屋が乗っていた。


「あれがエルフの家なの? 秘密基地みたいなの!」

「秘密基地? まあ、エルフの里以外では余り見掛けんからな」


 その後も、森の中を馬車で進むと、ポツリ、ポツリと木の上の小屋が見つかった。

 エルフの里といっても、集落があるわけではなく、森の広い範囲にわたって、木の上の小屋が見掛けられるものだった。


「みんな家が小さいの」

「まあ、木の上に作っているからな。そんなに大きくは出来ない。それに、基本一人暮らし、多くても夫婦と子供一人の三人だからな。そんなに広い家も要らないのさ」


 寿命が長いエルフは、子供を育てる時しか男女で一緒に暮らさない。

 子供も成人して独り立ちするまでは、一人しか設けない。

 子供が成人した後は、また男女別々に暮らし、次に子供を設けるのは、前と違う相手である場合がほとんどである。

 そのため、親戚関係は非常に複雑で、ある意味、皆んな兄弟の様なものであった。

 森全体が一つの家で、小屋が一人一人の部屋ともいえる状態だった。


「あれ? エルダじゃないか、いつ戻ったんだ」


 馬車でゆっくり森の中を進んでいると、狩の帰りだろうか、弓矢と獲物が入った袋を背に、騎乗したエルフの青年が近付いて来た。


「ウェルダ。今戻って来たところよ」

「今回は、随分と戻るのが早かったじゃないか」


「銀スライムを狩に少し戻っただけよ」

「銀スライム? あんなもの何にするんだ?」


「必要としているのはこの子よ。気圧計? を作るんだって」


「その子が噂の大魔術師か? 確か、お前の従姉のひ孫の姪だっていう」

「違うわよ確か、大叔母の姪の孫の従妹の玄孫よ」


 エルフの親戚関係は非常に複雑だ。


「レイニィなの。よろしくなの!」

「おう、よろしくな。元気のいい、お嬢さんだな」


「そうよ。来る途中も大熊(グレートベア)を相手にしてたんだから」

「あれは、先生が隕石落として倒したの」


「大熊を倒したのか、それは凄いな」

「そうでしょう。凄いでしょう」


「しかし、やっぱりエルダが星を落としたのか。ミディアが騒いでたぞ。途中、顔を出していけよ」

「えー。面倒くさいなー」


「帰って来たことが知れれば、押し掛けられるぞ」

「そっちの方が面倒か。わかったわ。途中寄ってみる」

「そうしておけ」


 話が終わるとウェルダは、ウマを飛ばして先に行ってしまった。


「先生、ミディアさんに会うの?」

「そういう事になったな」


「隕石落としたらまずかったの?」

「そんな事ないさ。ミディアが細かいだけさ」


「そうなの。必要なら一緒に謝るの」

「少し文句を言われるだろうけど、心配ないさ」


 レイニィ達はエルダの家に行く前に、ミディアのところに寄ることとなった。


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