記念撮影

私はいつの間にか泣きつかれ眠ってしまっていた。





眠ってしまっていたことに気付き身体を起こしてみたものの目は覚めているのに頭がボーッとして

しばらくは何も考えられなかった…





フッと割れに返り、トイレに行こうと立ち上がった時だった。





彦「こんばんは!」




玄関から彦さんの声がしたような気がした…





母「あ、彦さん…」




彦「夜分にすみません…もえは?

お邪魔します…」




彦さんの足早に歩く足音が近付いてきた…





私は足がすくみ部屋のドアの前に立ち尽くすしかできなかった。





彦「もえ?」




部屋のドアが開き、私の目の前には涙目の彦さんが立っていた…




彦「ごめん…ごめんな、」





彦さんはそう言いながら私を抱きしめてくれた…





私「ごめんなさい…ごめんなさい…」





私達はお互い謝り続け、泣くしか出来なくなった…














どれくらい時間が経ったのかは解らない…


けれど、私達はお互いの体温で少しづつ冷静になり始めた…













彦「大丈夫か?座ろうか?」



私「うん、本当にごめんなさい…。」



彦「もえが謝ることはないよ。

俺こそ大変な時に側に居られなくてごめん…」



私「あ、バスケは?何で???」



彦「俺が居なくても試合は出来るから…」




彦さんの体温を感じながら話をしてるだけで私は不思議なほど落ち着き、涙も止まった…。













そして、私達は3人で最初で最後の写真を撮った。














私のお腹に手を当て私の胸に顔を寄せ泣き張らした顔で必死に笑顔を作っている彦さん。

そんな彦さんを微笑みながら自分のお腹と彦さんの肩に手をおいている私…














今、事とき撮った写真は手元にないけれど

今でも目に焼き付いている…。














彦「初めての親子の記念撮影だな(笑)」





私「そうだね、どっちに似てたのかな?」




彦「もえに似てた方がいい。」




私「女の子だと思うの?」




彦「うん。絶対に女の子。」













この日、私達はいつまでもエコー写真を見ながら会えなかった初めての私達の子の話をした。














親子3人の記念撮影。

と、この時私達は思っていた…。

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