前触れなし。

お昼過ぎに私は彦さんのお宅を訪れた。














彦さんの家は田舎ならではの大きな家で

母屋と離れがあり、車庫も立派だった。














車を停めていると彦さんが車まで迎えに来てくれた。














私「こんにちは。車はここでいい?」



彦「いらっしゃい。車はそこでいいよ(笑)」



私「なんか、緊張する(笑)

お父さんもお母さんも居るんだよね?」



彦「緊張することないよ。

普通の家だし普通の親だから(笑)」



私「手土産渡して、一応挨拶して

彦さんの部屋見せて貰ったら早めに帰るから(笑)」



彦「そんな気を使わなくてもゆっくりしてけばいいよ」







そんな会話をしながら玄関へと私達は向かった






彦「おーい!」



彦父「はーい!ん?来た?

おーい!恭子!もえさんが来たみたいだぞ!」



彦父の反応に思わず笑ってしまった私に



彦「なんか、恥ずかしいわ(笑)」



と、彦さんは苦笑いしていた。




彦母「はーい♪」



彦さんのお父さんとお母さんは2人仲良く

玄関まで笑顔で出てきてくれた。




私「初めまして。もえと申します…

大晦日のお忙しい日にお邪魔してすみません…

これ、私の地元で少しだけ有名な家の父のお勧めのお酒です。

明日にでも皆さんで…と思いまして

お口に合えばいいのですが…」




ずっと、来る道中に考えてた挨拶。

噛まずに言えて私は少し安心した。






彦父「あ、わざわざすみません。

明日、早速みんなで頂きます(笑)」




彦母「もえさん、初めまして。彦の母です(笑)

こんな良いものをすみません。

ありがとうございます。

さ、狭い家ですがどうぞ(笑)」




私「ありがとうございます。お邪魔します。」




こうして、私の思い描いてた彦さんのご両親との挨拶と対面が無事に終わった。







…と、思っていたが甘かった。














彦さんの部屋でお茶とお菓子を頂いている時だった。














彦父「おーい!彦!」




突然、1階で彦父が彦さんを呼びつけた。





彦「え?なんだろう?ちょっと待ってて(笑)」




彦さんは返事もせず慌てて1階へ降りていった。





暫くして変な汗をかきながら戻ってきた彦さんは

私の顔を見るなり謝ってきた…






彦「もえ…ごめん、俺も何でこんなことになったのか解らないけど…お前も一緒に下に来てくれる?」




彦さんは額の汗を手で拭いながらそう言って謝った





私「え?どうしたの?何かあったの?」



彦「えっと…ごめん。

とにかくごめん…。」




私「ごめんじゃ解らないんだけど?」



彦「とにかく下に行こうか…」



私「うん…行くけど…何があったのよ?」




私達はそんな会話をしながら

彦さんの案内でキッチンへと向かった。





彦「お前ら一体これは何なの?

どうしたの?」



キッチンの扉を開いて彦さんがそう言った。



彦母「もえさんは?」



彦母の声が聞こえ、私はキッチンを彦さん越しに覗き込んだ。




彦父「あっ!もえさん!どうも。

えっと…これが彦の弟のタイで、タイの嫁さんのショコさん。孫の周で、こっちが彦の妹のフミでフミの夫の祐君。」



そう。

当然何の前触れもなく始まったのは

彦さんの家族紹介だった…



彦「ごめん…本当にごめん…」



彦さんは小さな声でずっと私に謝っていた…




私「あ、初めまして。」



突然の予期せぬ家族全員集合を目の当たりにして

私はそう言うし事しか言えなかった…。

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