母の誤算。
私が母の本気なのか浮気なのか今さらどうでもいい恋愛じみた事情を知るまでにそんなに時間はかからなかった。
宿が暇な日は父の計らいで私は休みになっていた。
休みの日には母と買い物に行くのが恒例行事とかしていてこの日も私は母の車で母と買い物に出た。
途中、少し遠出をしようということになり
ガソリンを入れるためにガソリンスタンドへ入った。
いつものようにレギュラー満タンをお願いし
助手席の母がカードを出す。
何事もなくガソリンが入りサインをスタンドの人が私に求めてきた。
この日はいつも行くスタンドではなかったのが母の誤算だった。
私は何も考えずサインしようとした時だった。
母「待って!お母さんが書くから!」
母が慌てた様子で私から伝票とカードを取り上げた。
『ん?』
母の慌てようとこの行動…
違和感でしかなかった。
母「私がカードを出したんだから私に伝票とカードを出すのが普通でしょ?どんな教育を受けてるの?
あなた、バイト?」
母はサインしながら店員さんにそう言うと
運転席側に店員さんが立っているのに助手席側のドアを開け車の屋根越しに伝票をチラつかせた。
店員さんは母のこの行動に驚いた顔を一瞬したが
慌てて走って行き、母から伝票を受け取ると
「申し訳ございません、西様ありがとうございました!」
そう叫びながら頭を深々と下げた。
私はその瞬間、母の顔を横目で確認すると
母は店員さんを真っ赤な顔で睨み付けていた…
そして、間髪いれず
母「もえちゃん!早く出して!気分が悪いわ!」
そう叫んだ。
私は店員さんの呼んだ名前を聞き取れなかったフリをしたが、母が犯罪に手を染めているのではないかとこの時は疑った。
そう、西は私の名字ではない。
そして、この時はまだ私はまー君のお父さんの名前すら知らなかった。
まー君の名字すら覚えてなかったから、母の慌てようと知らない名前で登録されていたガソリンカードで母の浮気よりも犯罪を心配してしまっていた…
だから、何1つ聞くことが出来なかった…
そして、この日を境に母の行動は少しづつ大胆になっていった。
パート仲間との食事会が夜に頻繁にあるようになった。
最初は何も疑っていなかったが母を出迎えると私の目を見ずうつむいたまま小声で「ただいま…」とだけ言い足早に部屋へ向かう素っぴんの母。
子供とは言え私も化粧をする。
『バレないとでも思ってるの?』『アホにし過ぎでしょ』そんな事を心で思いながらも笑顔で迎え続けた。
その内、パンストを鞄からはみ出させながらノーブラで帰宅…(笑)
もう、半笑いで迎えるようになっていった…
そして、決定的だったのが電話。
この頃から私は生理痛が酷かった。
決定的な事が起こったあの日は
私は朝から生理痛が酷く寝込んでいた。
夕方、友達とご飯を食べて帰ると母から連絡があった。
そこで、私は帰りにタバコを買ってきて欲しいとお願いした。
夜になり、ナプキンの残りが少ないことに気付き
私は母に電話した。
そして母はここで大きなミスを犯した。
電話に出た母。
「解った。ちゃんと買って帰るから。
もえちゃん、大丈夫?他に何かいらない?
もう少ししたら帰るからね♪」
いつになく上機嫌な母に私は
「大丈夫だよ。急がなくていいからゆっくり楽しんで♪じゃぁね♪」
そう言い電話を切りかけたが飲み物を買ってきて欲しいとお願いしようと思い直した。
私「あっ!もしもし?お母さん?」
私は受話器を耳に当ててそう声をかけたが
母の携帯からはゴソゴソとシーツか何かに擦り付けているような音しかしなかった。
そう、母のもう1つの誤算。
それは私が電話を切るであろうと思い込んだこと。
そして、自分も電話を切ったと思い込んだことだった。
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