消えた感情
私「もしもし?お母さん?
おーい!お母さん!ねぇ?電話に気付いて!(笑)」
私はこの時、何を考え電話を切ろうとしなかったのだろう…
未だにこの時の自分の行動が解らない…
本当は浮気を疑ってて、と言うか知ってても
それは私の頭の中だけの妄想なのかも?
そんな風に思っていたのかも知れない…
見知らぬ人のカードを母親が何喰わぬ顔で使っていても、例え素っぴんで何度も帰宅してても
ノーブラだろうが服が裏表逆だろうが、それでも…そんな風に思っていたのかも知れない。
軽蔑しながらも、どこかで…
淡い期待や希望を持っていたのかも知れない。
そんな希望や期待、アホだけど私の望みが
完全に経ちきられてしまった。
この日、忘れもしない。
19歳のクリスマス前に私は母親の女の声を聞いてしまった…
電話を切らず母に話しかけ続けていた私の声を遮るかのように男の人の声が聞こえた。
西「誰とでもこんなことしてるんじゃないの?(笑)」
電話の向こうからハッキリと聞こえる男の人の声で私は母に呼び掛けるのを辞め息を飲んだ…
母「そんなことない…西さんだけよ…」
そして、初めて耳にする母の女の時の声…
西「ほんとに?」
母「はぅ…ほんとに、…あ…、」
私が聞けたのはここまで。
受話器を耳に当ててるのに、声がどんどん遠退き
手が震え何も考えられなくなっていた…
フッと我にかえると受話器を握りしめた状態で
私は何故か泣いていた。
不思議と悲しいとか、嫌だとか、辛いとか
そんな感情は私の中になかった。
ただ、『どうしよう…』そんな事しか頭になかった。
受話器を耳に近付けてみると、まだ行為は終わっていない様子だった。
『あ、そうか。』
私は母に向けて「電話切れてないよ、気付いたら?」そう言ったような気がする。
そして、思いっきり力を込めて受話器を叩きつけ
電話を切った。
そして、これからどうしたらいいのかをひたすら考えた。
父が土地を買い商売を始めたところは
母の実家の直ぐ近くだった。
母の姉妹達はそれぞれ結婚しているが実家の近くに住んでいて、要は父にとってはアウェイの環境。
そんな中でも私の為、家族の為に奮闘して頑張ってくれている父を全てを知った私がどう守るか…
母に話をしてもきっと逆ギレされて
更に無茶苦茶にされてしまうのは解っている。
嫁いだ姉になんて相談できない。
ましてや、母方の祖父母や叔母達は
既に母の話を鵜呑みにしているはずで私の話を本気で聞いてくれるはずもない…
答えが出るはずもない事を私は必死に考えていた。
この日、母は何喰わぬ顔で帰宅し
私の身体を気遣う素振りをしながらも上機嫌だった。
そして、そんな母を見ても私は何も感じなくなった。
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