正気ではない。

姉が嫁いでからの母のこともあり

私と父の絆は前にも増して強くなった気がする。













パートに出始めた母は、それでも家とパート先と祖父母の家と宿を往復する日々。













ある日の事だった。













私は祖父に呼ばれ仕事の合間に祖父母の家を訪れた。













私「おじいちゃん!」













そう言いながら玄関を開けると母の靴が目に入ってきた…と、同時に母の声が聞こえてきた。













母「ほんとに、あの親子に殺される。

おやじは←(この頃、母は父の事をこう呼んでいた)

文句しか言って来ないし、もえはおやじの言いなりだし…稼ぎがないから私に働けとか言うし

私は働かされて家の事も宿の事も全部しろって押し付けられて…死んでくれれば楽になるのに…

おやじが死なないなら私が死にたい!」












母はかなり興奮していたのか大きな声でそう祖父母に話していた…












祖父母は母の話を聞いてどう感じて、何を母にアドバイスしているのかは聞き取れなかったし解らないけれど、どんな子でも何歳になっても子供は子供。

本当かどうかはさておき心配になるのは当たり前の話。

この頃は特に祖母の私と父への風当たりがキツかった…。










『そういう事ね…』













祖母の風当たりが強いのはこういう事だったんだと解った私は玄関を静かに締めその場から立ち去った。













元は母の浮気から始まった。













父親を私たちから遠ざけ、母親の役目も果たさず

男に狂っていたことは無かったことにし、

寂しさからか、また私から家族と言う絆を奪うかのような言動…

思い通りに行かなければ周りを巻き込み

父を悪者に仕立て上げている…

私はこの時は母が何がしたいのか正直、理解に苦しんだ…













と、同時に父が今までそうしてくれてたように

今度は私が家族の時間と父を守ろう。そう思った。














先ずは家事を母がパートから帰ってくるまでに全て済ませるようにした。

そして、母が暴走しないようにパートから帰ってくる母を家で待ち労いの言葉を必ず言うようにした。

お酒は隠し、母が退屈しないように宿の事など色々と相談するようにした。

仕事が終われば一緒にお風呂に入り、寝る前に付き合って欲しいとお摘みとお酒を持って母の部屋へ行き、どうでもいい話をしたり母の愚痴を聞いたりした。













私なりに必死だった。














が、1ヶ月もしない内に母は夜の私の訪問と帰宅時の出迎えをあからさまに嫌がり始めた…













初めは喜んでいてくれた…

そう思っていたことが急に?

何故なのか理由を私は探り始めた。













理由を探り始めると詰めの甘い母は

直ぐに尻尾を出してくれた。

嫌がり始めた理由は

まだ切れていなかったまー君のお父さんとの関係がバレてしまうのではないか?という恐怖心からだった…













教護院に面会に来た時、母は私に「もう別れた」と言っていて私は長い月日の中でその言葉を信じてしまっていた。












だから、母は必死だったんだと思う。














家庭を壊したくない訳ではなく、関係が終わってしまう事への恐怖。













この頃の母はそうだった。

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