姉の結婚
姉は私が20歳の誕生日前に結婚した。
一応、人並みに色々あったが(母の反対など)
何とか無事に式を挙げることができた。
父は姉達の乗った飛行機を海の上で見送った。
父らしい行動だと笑えた反面、私はちあきさんの言葉を思い出し、私が頑張らなくちゃ…そう思った。
が、姉が結婚して暫くすると今まで安定していた母がおかしくなり始めた…
父は「更年期」だと言っていたが
私にしてみれば子供の頃の母が戻っただけ…
そんな感覚だった。
姉が家に居た頃は父と私が宿を切り盛りし、姉は外で働き母はパートをして働いていた。
それが、姉の結婚を期に母もパートを辞め
父の経営する宿を手伝い始めた。
初めは接客さんや掃除について文句を言い始めた。
その内、フロント、予約さんに対してになり…
最後には板場さんにまで注意と言う名目の文句を言い始め、板場さん1人とフロントさん1人…接客さんも2人辞めてしまった。
その穴を埋めるのは父と私しか居なかった。
例えば、予約のお客様が到着する。
予め料理コースや料金に伴いお部屋を準備しているが、母は何度説明してもお客様を一目見て部屋を勝手に変えてしまう…
その事で困るのは接客さんと予約さんだ。
予約さんは部屋の変更にあたって、まだ到着されてないお客様に部屋のタイプが変わってしまった事を説明し、料金の変更があればその説明もしなければならない。
と同時に接客さんに連絡し、対応してもらうようにする。
もちろん板場は料理プランの変更があれば
それに対応しなければならない。
そんな事を繰り返していると、働きにくいに決まっている…
私は何度も父と一緒に母に何人もの人達が部屋の変更で手を取られる事を話したが全く考えてくれなかった…
もちろん、家でも母は暴君とかしていた。
私が部屋で寛いでいると、自分の部屋を掃除していた母が突然やって来て「あそこは掃除をしたのか?」と、怒鳴ってくる。
「まだだけど、少し休憩したらするから」と言えば「文句ばかり言って、お姉ちゃんとは大違いだ!お前は親父に似て最悪!お前が出ていけば良かったんだ」と雑巾を投げつけ私の部屋を荒らして出ていく…
ご飯を作れば「こんなもの食べられるの?」と、皮肉を言ったかと思うと目の前で捨てられる。
洗濯をし、午後からの仕事前に部屋に入れると
「お前はアホか?こんなに天気がいいのに、この時間にしまって乾くと思うの?」と、私の気持ちを逆撫でしてくる…
毎日のようにそんな事が繰り返されたある日
私の我慢の限界がとうとう来てしまった…
父の目の前でいつものように母は私の足を掃除機で何度も「邪魔だ」と叩いてきた。
もう、限界だった私は気がつくと母の胸ぐらを掴み壁に押し当て右手を振りかぶってしまっていた…
母「殺すなら殺せ!」
母のこの言葉に私は我に返り、振りかぶった拳を下げる事は出来たが怒りは押さえきれなかった…
私「いつまでも自分の思い通りになると思うなよ…お前の思い通りにはもうさせない。
いつまでも母親ぶるな。」
そう言ってしまった…
母は真っ赤な顔をして私を見ていたが
私が力を抜いた一瞬を見逃さず、私を振り切り自分の部屋へ戻って行った。
父はその一部始終を見ていて
次の日、母に外に働きに行くよう説得してくれた。
今なら解る。
母は寂しかったんだと…
けれど、この頃の私は働き初めた母に対し
更に怒りを覚え、軽蔑していく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます