駅
私達は朝早くから駅にいた。
改札口で姉の到着を待っていた。
純「あっ!お姉だ!(笑)」
私より先に姉を見つけた純ちゃんがそう叫び
右手を大きく振った。
久し振りに見る姉はとても綺麗になっていた。
姉「もえ?久し振り。純ちゃん、ありがとう。」
私の中では姉は数日こっちに居るものだと思っていたが、姉の手荷物はとても少く『あれ?』と思ったのを覚えている。
けれど、この時の私はまだそれに気付かなかった…
この日、純ちゃんは私達をハウステンボスに連れてってくれた。
姉は私達にお揃いのTシャツを買ってくれ
着替えて純ちゃんと並んで撮った写真が今でもある。
何枚も何枚も純ちゃんと2人で撮った写真…
その夜の豪華な外食…今、思えば思い出作りでしかない。
夕食後は近くのスーパー銭湯へ行き皆で疲れを癒し
この日姉は私達の家に泊まった。
次の日には帰ると言った姉を送るために
私達はまた早朝から熊本駅に行った。
改札口の前に私と姉を待たせ純ちゃんは切符と手土産を手に戻って来た。
手渡された切符を見ると何故か入場切符が1枚…
不思議に思っていた私に純ちゃんは
小さな紙袋を手渡し、駅のホームまで行き姉を見送って来るように言った。
私は嫌な予感がして、嫌だと駄々をこねた。
そして、この時明かされた姉と純ちゃんの想い…。
姉が熊本まで来た訳、そして昨日の思い出作り…
全ては私を地元へ帰らせるためのものだった。
純ちゃんの貯金は年末の帰省や日々の生活…
ケガや退職、次の職探しや引っ越しなどで働けなかった時期で底をついてしまっていた。
私を1人で帰すにしても心配だった純ちゃんは
姉に相談し、姉が迎えに来たのだった…
それでも駄々をこねる私に純ちゃんは
「お金を貯めて必ず迎えに行くから待ってて欲しい」
と、言った…
私が教護院に入った時の父のように
目を充血させながら必死に訴えていた…
駅の改札口で姉も私を説得し始めた…
「もう、誰も反対していないからいつでも純ちゃんに会いに来ればいい。
純ちゃんも辛いんだから、もえも我慢しなさい。」
2人の説得に同意して私は帰るしかなかった。
姉と2人で改札をくぐり、私は振り向かずホームへ向かった。
博多行きの汽車に乗ると涙が溢れだし止まらなかった
姉はそんな私にウォークマンのヘッドホンを耳にあててくれた。
松任谷由美のANNIVERSARYが流れていて
私はこの歌を聞きながら熊本を後にした…
若すぎた私達の生活が、この日から少しずつ薄れていった。
純ちゃん20才、私は18才目前だった。
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