再び…
教護院を卒業して、私は父の経営する宿を手伝うようになった。
朝は5時から板場さんに交じりお客様の朝食の盛り付けなどを手伝い、お客様を案内、お見送り、清掃…
その後は休憩し、14時30からその日のお客様の把握に部屋のチェック、お風呂の準備、夕食の手伝い、お客様のお出迎えに案内、夕食の片付け…
毎日があわただしく夜は気がつけば寝ているという状態だった。
それでも父とずっと一緒に過ごせることが嬉しくて楽しかった。
…が、2ヶ月くらい経った頃から
身体が重く感じ始め我慢できないほどの眠気が私を襲うようになっていった…
その内、朝トイレに行った後には
必ずと言っていいほど、冷や汗をかき立っていられないような脱力感が襲うようになった。
『何かがおかしい…』
そんな思いはあったけれど
父と一緒にいられる時間が楽しくて嬉しかった私は病院に行くことも誰かに相談することもしなかった…
その内、お腹がやたら空くようになり
けれど食べようとすると吐き気が襲うという症状が出始めた…
私のそんな様子を見て母が「もえちゃん?あなた…妊娠してるんじゃない?」そう言った。
私「それはないよ(笑)」
この時、私は母の言葉を笑い飛ばした。
けれど…少しづつ不安になったのも確かだった。
私は父にも母にも内緒で検査薬を買い検査してみた。
『お願い…間違いであって…陽性じゃぁありませんように…』
そんな事を願いながら検査薬を見つめていた…
尿が少しづつ検査薬に染みていく…
そして、ハッキリと出た陽性反応…
『まずい…』
この時、私は本気でそう思った。
夢にまで見てた、ずっと心のどこかで願ってた家族との時間が私の妊娠で壊される…そう思い込んでしまっていた。
『どうしよう…困る…ヤダ…今度こそ皆に見捨てられる…父にも嫌われる…』
私は産むなんて全く考えてなかった。
『誰にも気付かれず…何とかしなくちゃ…』
私の考えは浅はかだった。
もし、もしもあの時…
そんな事を思う時がある。
けれど、この時の私は検査薬を捨て
密かに我が子を自らの意思で殺す事しか考えてなかった…
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