先生。
次の日、私が目覚めると祖父母の家へ来るようにとメモが置いてあった。
姉は仕事へ行き、母はパートに出ていて
父の姿もなかった。
私は初めての家で、それでも家族の元だったからなのかグッスリと眠っていた。
キッチンに行ってみたが、何が何処にあるのか解らない…
冷蔵庫を開けてお茶を飲み、昨日、母と姉が買ってきてくれた服に袖を通した。
母には教護院での簡単な卒業式で会っていた。
3ヶ月くらい前なのに袖を通した服はブカブカだった…
トンコ中に痩せたのか、母がサイズを間違えたのか…昔なら『やっぱり私の事なんか見てないんだ。』と思ってしまっていたが
この時は何故か嬉しくて笑えた。
そして、ブカブカの服のまま私はメモの通り祖父母の家へ向かった。
私「おはよう…」
玄関を入ると眉間にシワを寄せた祖父が立っていた。
祖父と顔を合わすのは母が壊れた頃が最後。
私の育ての親と言ってもおかしくない祖父が
久し振りに会う私に向けた視線は犯罪者でも見るような視線だった…
私「起きたらここに来いってメモがあったから…」
私は玄関の中に入るのを躊躇していた…
「はーい!」
そんな時、キッチンの方から祖母の声がした。
手を前掛けで拭きながら祖母が出てきた。
祖母「なんだ、もえか…はよ入って手伝え!」
何をどう手伝うのかは理解できなかった。
けれど、昔と変わらない口調の祖母に私は救われたのは確かだった。
私「何をどうすればいいの?」
私は平静を装い、祖父を見ないようにしながら
祖母の後を追った。
祖母「これ、湯飲みセットをこっちに置いて…
あっ、お茶請けの器は…これにするか…」
祖母は来客用のセットを出しながら忙しなくしていた。
私「誰か来るの?」
私のこのひと言で祖母は動きを止め私を見てきた。
祖母「しらん。」
そして、一言そう言うと私から目をそらした…
仕方ないことだと思うけれど
よそよそしさや祖父母との距離を感じてしまった…
『私が祖父母から逃げたんだから…すぐに受け入れて貰えるわけがない。』
そう自分に言い聞かせながらも
『こんな思いをしてまでここに居なくちゃいけないの?』とも、思ってしまっていた。
父「もえ!」
そんな時、父の声がした。
私「あっ!はーい!」
私は慌てて玄関に向かった。
「久し振りにだな、少し痩せたか?
けど…元気そうで安心した。」
そこには父と共に教護院の山先生が立っていた…
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