帰宅。
私は帰りたい一心でまた売りを始めることにした。
忘れもしない。
とある高校の教員の「まさし」と名乗る人と出会い、生で中出しされた。
が、その1回で私は帰るためのお金を手にいれた。
「まさし」さんは私にポケベルの番号を渡してきたが私はそれを捨ててしまった。
このことは後々、後悔することになる…
けれど、この時の私は『帰りたい』ただそれだけだった。
私が休みの日、マネージャーが外出しているのを確認し、私は荷物をまとめ事務所に行き店長に家出であること、そして迷惑を掛けそうなのでここを辞めて去る事を話した。
店長は驚いた顔をして聞いていたが、私の手荷物を見て了承してくれた。
私「すみません、お世話になりました。」
私は深々と頭を下げ事務所を後にした。
パチンコ店から出ると予め呼んでいたタクシーに乗り込み最寄りの駅を目指した。
この時のタクシーの運転手さんは
何度か私を乗せたことがある人だったらしく…
後々、関わることになりこの時の話をしてくれた事がある。
パチンコ店から駅まで乗った少女は
それくらい印象的で何か声をかけなければ…
そう思える表情をしていた…と。
『帰りたい』と強く願いながらも
いざ、実際帰るとなると怖かった。
また、教護院に戻されるのではないか?
という不安と…今度こそ父に愛想尽かされるんじゃないか?母は受け入れてくれるだろうか?
祖父母は?姉は?そんな事を考えてしまい
また1人になるの恐怖が私を不安にさせていた…
そんな私を乗せたタクシーは最寄りの駅に着いた。
私「ありがとうございました。」
お金を払いタクシーを降り、電車を乗り継ぎ
私は地元の駅に着いた。
たった数年…それだけしか経っていないのに
駅前は変わっていた。
懐かしい風景は少しだけ…
友達と遊んでいた場所もなくなり
悪さしたお店もなくなっていた。
私が産まれ育った街は私を置き去りにしているように見え、取り残されている感覚に襲われた私はまた駅に戻った。
『やっぱり受け入れて貰えない…
笑顔でお帰りなんて言われる訳がない…』
変わってしまっていた街並みから
そんな事を思ってしまっていた…
電光掲示板に目をやりボーッとしていると
私を見つめ真っ直ぐ歩いてくる人影が目に留まった
2年…子供の頃に比べればあっという間。
それでも懐かしく、私を守ると言ってくれてた父が悩み、また逃げようとしていた私を見つけてくれていた…
父「電話くらいしろ。」
父はそう言いながら私の頭に手を置いた。
私「ごめんなさい…けど、何で解ったの?」
きっと、この時私は恋人に久し振りに会った
少女のように泣き笑いしていたと思う…
そう言いながら、父に寄り添い父の顔を見上げた。
父「いつ帰るのか解らなかったから毎日来てた。
…そんな事はどうでもいい。家に帰るぞ。」
父はそう言うと私の頭の上にあった大きな手を
私の背中にそっと当て、歩き始めた。
車の中で何を話したのか覚えてない。
ただ、家に帰る頃には私の不安は全て消えていた。
私が教護院に入っている間、私を受け入れる為に
父は奮闘していたことを私はこの時、初めて知った。
お店を人に貸し、住んでいた家を売り
父は宿を始めていた。
私を引き取るにあたり、教護院の先生達に今までの生活環境では帰せないと言われたらしく
父は自宅兼職場となり、お馬鹿な私1人でも後々食べて行ける仕事を考え宿を始めていた。
父の想いは私の想像以上だった…
新しい家に着くと父は私を真新しい部屋へ案内してくれた。
父「ここがお前の部屋だ。」
父が私のために用意してくれていた部屋は
窓の沢山ある明るい洋室だった。
部屋の真ん中にベットが置いてあるだけの部屋。
でも、私には父の気持ちが嬉しくて
あの時、電話して良かったと思った。
母「もえちゃん?お帰り~!」
姉「もえが帰ってるの?」
そんな時、買い物に出掛けてた母と姉が帰ってきた。
少しだけ身構えた私は両手いっぱい買い物してきた母と姉の姿に思わず笑ってしまった。
母「ほらね、お母さんの勘は当たるでしょ?」
母は誇らしげに姉を見ながらそう言った。
姉「だね(笑) 今日買いに行って正解だったね。」
姉も母を見ながらそう言い私の部屋に入ってきた。
2人は私の部屋に置くものや、下着などを買いに行ってくれていた。
私達は女3人でカラーボックスを組み立て
小さな収納家具に服などを片付け私が教護院に入るまでには想像もつかない程笑い合いながら話をしていた。
そんな私達を父は笑みを浮かべながら眺めていた。
この日は誰も教護院のことも、この先のことも話すことはなく、普通の…私が理想としていた家族像そのものだった。
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