父の想い。

マネージャーが去った後…

何とも言えない、表しようのない感情が次々と沸き上がってきて私は何年か振りに泣いた…














ひとしきり泣くと1枚づつ剥ぎ取られた服や下着を拾い集めシャワーを浴びた…













身体中、シャワーだけでは流せない程の

マネージャーの唾と感触を必死に擦りながら













『もう、こんなのは嫌だ…』














そう思った。














そう思うと、また次々と涙がこぼれ落ちた…














次の日、朝目覚めると私は父に電話をした。














私「もしもし?お父さん?」














私が教護院から逃げて2ヶ月が経とうとしていた。














父「もえか?元気か?飯はちゃんと食べれてるのか?」













父は私の身体を1番最初に気遣ってくれた。














私「うん。ちゃんと食べてる。

私ね、働いてるの…だから…」














そこまで言って私は黙りこんでしまった…














『大丈夫。心配しないで。』














その言葉がどうしても出てこなかった。














父「もえ?ワシがお前に言ったことを覚えてるか?

帰ってこいとは言わん。

けど、無理してるのならワシは何処へでも、どんなところでも迎えに行くぞ。」













父は優しく、力強い口調でそう言ってくれた。














父のその言葉で私の子供の頃に誓った『誰もいらない。1人で生きていく。』という誓いは崩壊した…














私「戻りたい…お父さんの子供に戻りたい…」














ずっと心の奧にしまいこんでいた想いを

私はやっと言えた…
















そして言い終わると押さえ込んでいた感情が爆発してしまい、公衆電話の受話器を抱きしめ声を出して泣いてしまっていた…













『お父さん、助けて!』














泣き叫びながら心の中で何度もそう強く思った。













どれくらいの時間、泣いていたのか解らない…

けれど、受話器の向こうで父の声がかすかに聞こえ、私は受話器を耳に当てた。













父「もえ?聞こえるか?今どこに居る?」














私「○○県のパチンコ店に居る…」














この頃、私が居たパチンコ店は

父の居る県の隣だった。













父「どこの何て言うパチンコ店なんだ?」














父とのそんな会話は私を少しづつ冷静にさせていった…。














私「お父さん、ごめんなさい…それは言えない…

けど、帰りたい…」













父「解ってる。帰って来れるのか?

お金はあるのか?駅は近くにあるのか?」













父のその言葉を聞きながら私は新たな決意をした。














私「うん。お金は今から貯める。

もう大丈夫。必ずお父さんの所に帰るから…」














もう、涙も乾き私は立ち上がり父にそう誓った。














父「いつでも電話してこい。

後…1つ。お前は間違いなくワシの子だ。

何かあれば必ず守る。それを忘れるな。」













私は父のこの言葉を噛みしめ、電話を切った。














この時、父はどれだけ自分の想いを殺していたんだろう…

今でも子煩悩でパーフェクトな父のことだから

居たたまれない思いに違いない。














けれど、父は自分の気持ちを殺し

私を信じ私に委ねてくれた…













きっと、父が怒り何処に居るのか聞き出そうとしてたら…直ぐにでも帰ってこいと言われていたら…私は父からも逃げていたのかも知れない。

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