最後のトンコ。
私がヒッチハイクした人は「やす」と名乗った。
教護院から逃げて乗せてくれる人達に必ず聞かれることがある。
「なぜ、あんな場所に居たのか。」
と、言うことだ。
確かにあの近くに教護院があるなんて知らない人が多いはず。
会話のついでなのか、不振がってるのか解らないが必ずそう聞かれる…
私は今回は1人というのもあるし
あまり長く一緒にいたら良くないような気がして
「彼とドライブ中に喧嘩になって置いていかれた」と告げた。
やすさんは始めは「彼氏は探してるんじゃないか?」と気にしていたが、かといって車を止める様子もなかった。
そして納得したのか、してないのか解らないが
車は静かに海沿いのラブホテルへ入って行った。
『はぁ…またか。』
私は思わずため息を漏らしてしまった。
やす「いいよね?」
車を停めてからやすさんが聞いてきた。
私「乗せてくれたし…いい人そうだから…」
と、恥ずかしそうに私は言った。
そして私達は無言のまま部屋へ入り、別々にシャワーを浴びベットを共にした。
1回戦終了後、大抵の人は眠りにつくか
部屋を後にするけれどやすさんは違っていた。
やす「ごめん、煙草吸っていい?」
私「どうぞ。」
私がそう言うとやすさんは小走りに煙草を取りに行き、またベットへ戻ってきた。
やす「もしかして…吸う?」
私にこんな感じで気遣ってくれる人は久し振りだった。
私「ありがとう。」
私達は静かにベットの上で煙草を吸った。
煙草を吸い終わると「何か飲む?」と、また私を気遣ってくれるやすさんに私は少しづつ心を開いていったような気がする。
飲み物が届くと私達は色々話しながらベットの上で、まるで恋人同士かのようにゴロゴロした。
そして、この日は結局このラブホにお泊まりした。
次の日、私達はギリギリまでラブホに居て
昼間はドライブをし、夜になってやすさんの家に行った。
やす「ごめん、親と同居だから静かにね(笑)」
私「わかった。」
と、言いながらもいい人だと思い始めていたから親と同居だと聞いて迷惑をかけたらダメだと思った。
そして、私は意を決してやすさんに「教護院から逃げている」と告げた。
始めやすさんは驚いていた。
けれど、迷惑をかけられないから明日の朝ここを出て消えると告げると私に夕方までこの家に居るように言ってくれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます