最後の…。

トンコから帰ると罰が待っていた。














愛のある体罰だ。














本当に愛があったのかどうかは解らない…














りみは主犯とみなされシバキ棒と呼ばれていた木刀や竹刀などで3人の先生達に囲まれ前歯が折れ、肋骨にヒビが入る程やられた。













私は…今までの努力が実っていたのか

前髪をバリカンで刈られるだけで済んだ…













が、年頃の私は鏡を見る度…髪をかきあげようとする度…そして洗髪の度に泣きそうな気持ちになった。













山「もえ、きっと似合うぞ(笑)」














私の前髪を鷲掴みにし、そう言いながら最初にハサミを入れた山先生の笑みが忘れられない…













私の初めてのトンコはそんな屈辱で締め括られた。













結局、私は教護院にいる間の数年間で4回逃げた。













2度目のトンコの取り調べでナンパされたと言ったことがあった。













すると警察はホテルを聞き出すと次の取り調べの時にはホテルの前で写した車と

部屋へ入った相手の顔写真と(数枚の写真を広げその中にナンパしてきた人の写真があった)

そしてホテルの室内での会話の一部を知っているとばかりに話され警察の怖さを知ったこともあった…













私が警察を甘く見たせいで助けてくれた男性に迷惑をかけた…と後悔したこともある。













と、同時にホテル内のカメラの存在もこの時初めて知った。













そして、最後のトンコ。














私は退所前だった。














簡単な卒業式も終え、職業訓練もし、私の性格や素質などを考慮して就職先も数社まで絞られていた頃に私はトンコした。














この時は1人で昼間に堂々と教護院を出た。













確か曜日は日曜日。













寮の先生達は皆休みでそれぞれの家族と出掛けていて家庭科を教えてくれていた週1で通ってきている女性教員が私達を寮で見ていた。













私は何故か歳上の女性に嫌われる…














何がダメなのか未だに解らない。














けれど、本当に嫌われ嫌味などを言われる。













この時もそうだった。













「私はあなたが嫌いなの。顔も見たくない。

だから今から静養室に行くからその間に消えて。」













面と向かっていきなりそう言われた。














『はぁ?』














始めはそう思った。














けれど、少しづつ怒りが込み上げてきて

『なら、お望み通り出て行ってやる』

そう思ってしまった。














「ねぇ?本当に行くの?」

「私も連れてって…」













一部始終を見ていた寮生達が私にそう言ってきてたが私は無言で服を着替え堂々と玄関から寮を出た。













教護院の正門から出て車通りのある道に出ると

直ぐに1台の車をヒッチハイクできた。













止まってくれた車は20代の男性だった。














普段なら乗らない感じの人だったが

私は迷わずこの車に乗り込んだ。













こうして、私の最後のトンコが始まった…。

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