流産。

妊娠、性病の告知を受けてから3日













私は山先生に渡された薬を飲み続けていた。













あの日は日曜で私達は書道をしていた。













正座して前屈みになった時、私は違和感を感じた…













下着が濡れている感覚にヌルッとした感じ…













『あれ?』













私は先生にトイレに行きたいと申請してトイレへ駆け込んだ。












個室に入り下着を下ろしてみると、うっすらと血がついていた。













『やっぱり…生理来た!』













本気でそう思った。













が、今までの生理と何かが違った…













和式トイレで立ったまま確認していた私の足を

血が伝っていく…












『えっ?うそ…何で?』














私は何度も足を伝って流れ落ちていく血をティッシュで拭き取りながら必死で頭を整理した。













『どうしよう…本当に赤ちゃんいたの?』













そんな思いが浮かんだ…














『私の家族…私の所に来てくれた家族…』













やっと私の中に芽生えた母性に気付くと

私はティッシュを股に挟みナプキンを貰いに行き

お腹をかばうように横になった。













そして私がナプキンを申請して貰ったという報告を受けた山先生が私のもとへやってきた。













山「もえ?」













私「先生…生理来ちゃった」














山「それは生理じゃない。出血は?多いのか?」












この辺の会話は何となく覚えている。













けれど、私は意識を失ったのか安心したのか解らないがこの先の記憶はない…













私の記憶があるのは次の日の朝。













静養室で山先生に起こされてからだ。














山「もえ、病院に行くぞ…」













私「いやです。この子が落ち着くまで

ここで静養しときます。」













山「いや、もうその子は助からないんだ…

諦めなきゃいけない。」













私「じゃぁ、ここで見送る。

だから病院には行きたくないです。」













山「ワシらはお前をお前のご両親から預かってるんだ…流産はお前が思ってるほど軽いものじゃない。お前の命が危なくなる。だからお前が嫌だと言ってもワシはお前を病院に連れていく。いいな。」













山先生はそう言うと私の身体を抱え車に乗り込ませた。













この時、私は身体も重く感じ1人では歩けない状態だった…












車中で私はまた記憶が飛んだ…













『やだ…いやだ…』













そんな思いの中で私は麻酔から目覚めた…














教母「あ、目が覚めたね…先生を呼んでくるから」













視覚はまだハッキリと戻ってなかった。













一点だけが見え、回りは暗く小さな穴から景色を見ているかのような感じだった。












けれど、音だけはハッキリと聞き取れるような状態で私はまた車に乗せられ教護院へと戻った。













何が自分の身に起こったのか頭がボーッとして整理できなかった…













ただ、麻酔が完全に覚めるまでに移動した為にくる吐き気を赤ちゃんの最後の私へのメッセージだと思い込み居るはずもないお腹を擦り続けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る