花姫様の弟神・海景。
「――どういうことでしょうか」
キレイな顔に怒りを
正座をした僕と花姫様の前に仁王立ちしているのは、『
「海景……すまぬ」
普段は花姫様にどこまでも甘いのに。海景の眼差しはなぜか花姫様を、厳しく
元々僕は、こいつがあまりすきではない。花姫様の前でだけ異様ににこにこもじもじしているし、ぶっちゃけ花姫様に向かいあっているときは
それに、全ては僕の落ち度なのに、しゅん、と身を縮こまらせる花姫様を見ているのは耐えられない。
これまでは花姫様の弟、とそれなりの態度で接してきたけれど、もういいや。
僕は立ち上がるために正座を崩しながら、いけしゃあしゃあと言い放つ。
「ねえ、普段は引くほどシスコンのクセに、さっきから花姫様を睨むのはどうして?」
「なっ、シス……っ!?」
「僕が気づいてないとでも思ってた?」
図星を指されておたおたする海景の前へ進みでる。
「子どもの僕が花姫様へ抱きつく度、恨みがましい目で見てたよね? あと、いつも花姫様相手だと瞳キラキラさせてるし。わからないわけがないでしょ」
「貴様……ッ、それが本性か!?」
「彼女は被害者なんだ。僕が花姫様に迫って、手を出してしまった」
「――!!?」
目を見開き、身を強ばらせる海景。
反射のように僕の胸ぐらを掴んだ海景へ、花姫様が慌てて駆けよる。
「海景……っ、やめて! わらわが悪いのじゃろう、全てわらわの、『影響』なのじゃろう……?!」
「――姉上様、それは、っ、でも……」
「……」
言いよどみ頭を抱えた海景と、痛ましげにうつむいてしまった花姫様に、僕は不安が募りはじめる。
「なに? 話が見えないよ……」
代わりに海景が吐き捨てるように答えた。
「貴様は恐らく……『情』をかけられたのだ」
「じょう……?」
「いいか、基本的に我々神は、自身の
唐突な質問に首を傾げつつも、素直に考えを述べてみる。
「……えっと。神様は全てを平等に
「それもある。だが、その最たる理由は――あまりに
『情』、『愛念』、『理を覆す』……。ひとつひとつが、パズルのピースみたいに現れてくる。
海景はビッ、と僕を指差して、忌々しげに告げた。
「小僧、貴様は今、『ヒト』でなくなろうとしているのだ」
「は……?」
「貴様はっ認めたくないが! ほんっっっとうに認めたくはないが!!」
「二度言うね」
「茶化すな沈めるぞ! ――無意識下ではあろうが、姉上様に望まれたのだ。永く共に生きたい、と」
「――!!」
うそ。うそ……。
花姫様が、僕を……!
これは夢、じゃないよね!?
ずっと、苦しかった。
貴女に焦がれて、触れたくて、欲しくって、でも。彼女から求められることはきっと生涯ないだろうと、どこかで思い至っていた。
ああ、それなのに!!
うれしすぎて、反射的に花姫様のほうをがばり、と
「花姫さ……」
僕は困惑を隠せなかった。
彼女は
僕と海景はどうしていいかわからず、身動きがとれなくなってしまう。
先に
「ごめ、なのじゃ……つかさ、っ」
「花姫、様……?」
しゃくりあげながら、華奢な両の手で顔を覆い隠す彼女に、僕がそっと触れようとすると……。
「ごめん、なさい、じゃ。つかさ。わらわのせいで、そなたのみらい、めちゃくちゃに……っ」
「――な、」
なんで。どうしてそんなこと。
「それっ、本気で言ってるの!?」
思わず強く彼女の肩を掴んで、声を荒らげてしまうと、その反動で覆われていた手は外れ、その表情を知ることはできたけれど。
花姫様は、大粒の涙をあふれさせ、それが意図するものは、きっと――。
「『後悔』、してるの……?」
花姫様は、目を逸らす。
それが
僕の目の前は真っ暗になって、その意識は深く深く、落ちていった。
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