第40話 ちかいのことば
”ピンポーン”
「ゆうすけー、カノジョさんのお迎えよーー」
美樹ネエがモニターを見るまでもなく揶揄い気味に僕に声を掛ける。耕平も「にーにー、おむかえだよー」とか言ってるし、ホントに勘弁して欲しいのだ。
でも、正直僕はヒヤヒヤものだ。モニターに映ってるのが綾香ちゃんなのは自信があるけど、問題はその表情だ。いつもの綾香ちゃんなのか、それとも・・・
モニターに映っていた人物を見て僕はホッと肩の力を抜いた。その僕を見た姉さんもホッと肩の力を抜いた。
「はーい」
姉さんは立ち上がって玄関へ行こうとしたけど、それを遮るようにして玄関へ駆けて行った人物がいた。それは・・・耕平だ!
姉さんも僕も『あれあれっ?』という表情で互いの顔を見合わせてしまったし、美樹ネエは美樹ネエでポカーンとしたという表情だけど、幼稚園児にあーだこーだ言っても始まらないから、ここは耕平の好きにさせた。
”カチャッ”
耕平は玄関のロックを開けると、手を伸ばしてドアノブを自分で回し、玄関扉を自分の方に引いた。
「
「ぐっどもーにんぐ!」
その瞬間、綾香ちゃんが硬直した!しかも目が完全に点になっている!!
「ぐっどもーにんぐ!」
耕平がもう1回、綾香ちゃんに呼び掛けたから綾香ちゃんが『ハッ!』と我に返ったけど、その綾香ちゃんは耕平に「
「・・・ねえ、ぼくのえいご、かんぺきでしょ?」
耕平はエヘン!と言わんばかりに背中を少し反らしてるから、僕も姉さんも美樹ネエもリビングで爆笑だ!綾香ちゃんも本当は笑いたいんだろうけど、さすがにそれは失礼だと思って堪えているのが丸分かりだから、そこがまた面白過ぎて、それこそお腹が千切れそうなくらいになって笑いまくってる!
「・・・あ、ああ、そうだね」
「でしょ?ぼく、ようちえんでね、せんせいにほめられたよ!」
「うん、それは素晴らしい事だね。お姉さんも耕平君を褒めてあげるよ」
「ぼくはねえ、えいごをいっしょうけんめいべんきょうして、ぜーったい、おねえさんみたいにえいごをペラペラしゃべれるようになる!」
「おー、それはいい事だ。お姉さん、応援してるよ」
「『おうえんしている』じゃあだめだよ!これは『ちかいのことば』だよ!」
「へっ?」
「ぼくねえ、えいごがペラペラになったら、おねえさんとけっこんする!」
耕平が玄関で超がつくほどの真面目な顔で綾香ちゃんにプロポーズ(?)したから、僕も姉さんも美樹ネエも、もう床に転がって涙を流しながら笑うしかなくなっている!綾香ちゃんはどう返事をしていいのか分からないようで、ホントに固まってしまってるから、こっちも爆笑以外の何者でもない!
「・・・え、えーと、それは・・・えーと」
「やくそくだよ!」
「・・・そうだね、耕平君が英語を完璧に
「ホント!」
「ああ、約束しよう!」
綾香ちゃんはニコッと微笑みながら耕平の頭を撫でたから、耕平もニコニコ顔になった。
「じゃあ、ぼく、まだあさごはんをたべてないから、いまからたべてもいい?」
「うん、いいよ。お姉さんは学校へ行くよ」
「いってらっしゃーい!」
そう言うと耕平はリビングに戻ってきて僕と姉さんに「にいにい、ねえねえ、はやくがっこうへいきなさーい!」と言ってるけど、僕も姉さんも立ち上がるのも苦しいくらいに笑い続けてたから、とてもではないが起き上がれない。それは美樹ネエも同じだ。
結局、僕と姉さんが起き上がったのは、それから少し経ってからだ。当たり前だけど、綾香ちゃんは玄関で両手を自分の腰にあてて、ちょっと不機嫌そうに僕と姉さんを見てたのは気のせいではないですよね。
「「「行ってきまーす」」」
「「いってらっしゃーい」」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます