渡りに船

第38話 今日はうちの中では烏龍茶以外は禁止よ!

“トントン”


(シーン・・・)


“トントン”


(シーン・・・)


“ガチャリ”


「おーい、雄介ゆうすけ、おはよー」

「・・・・・ (雄介君、熟睡中です)」

「ゆーすけー、早く起きないとお姉ちゃんは怒るわよー」

「・・・・・ (雄介君、まだまだ熟睡中です)」

「判決!コチョコチョの刑!!」


”コチョコチョコチョコチョ”


「アーハハハハハハハハ!」

「どうだ、起きるか、それとも寝るか、選べ!」

「起きる!起きるからやめてー!」

「じゃあ、サッサと起きなさい!」

 僕は今日も姉さんに無理矢理(?)現実世界に引き戻された。姉さんは僕の脇の下に手を突っ込んでくすぐるから、否が応でも目覚めるしかないのだあ!

「情けないぞー。高校2年にもなって姉に起こされるなんてさあ」

「まだ目覚まし時計が鳴る30分前だぞー。僕は悪くなーい!」

「お父さんたちは仕事してるんだからさあ、あんただけ寝てるのは非常識です!」

「そんなあ」

「それともー、目覚まし時計が鳴るまでお姉ちゃんと一緒に寝る?」

「へっ?」

 最初は冗談かと思ってたけど、姉さんは本当に僕の掛け布団をまくり上げて入ろうとするから、逆に僕の方が焦りまくりだあ!

「姉さん!前にも言ったけど、この小説はR18指定ではありません!読者に誤解を与えるような行為はやめてください!」

「ゆーすけー、R18とか読者とか、一体なーに?」

「そ、それは・・・とにかく、僕は起きますからー」

「ケチ!」

「ケチじゃあないです!高校生として常識です!」


 相変わらずではあるが今朝も玉子料理のオンパレードだ。たまごかけごはんに始まり、玉子の味噌汁、ハムエッグ、法蓮草と玉子のお浸し・・・玉子は贅沢に使ってますが贅沢料理ではありません。姉さーん、贅沢な事は言いませんから塩サバと大根おろしが欲しいですー・・・と言えたら僕も苦労しません、はい。


 テレビはいつもの情報番組だけど、最近、姉さんの御機嫌は相当宜しくない。


 なぜなら・・・


「・・・ゆーすけー、今日の占いの結果次第ではチャンネル変えるわよー」

「はいはい、好きにして下さい」

「あー!あんたさあ、どうして呑気でいられるのよ!」

「姉さん!占いは『当たるも八卦はっけ当たらぬも八卦はっけ』ですよ。そんな事で目くじらを立てない下さい」

「運勢が良ければ朝からルンルン気分で登校できるわよ!占いは重要です!!」

「勘弁して下さいよお」

 そう、ここ暫く、双子座は10位、11位、12位しかないのだから、呪われているとしか思えないほどだ。今日はさすがに1位になれ、とは言わないから半分より上になって欲しいです。そうでないと姉さんが大爆発を起こしそうです。テレビ局のみなさーん、貴重な視聴者が逃げないためにも、今日は6位以内でお願いしまーす!


 そして・・・


 運命の占いコーナーの時間になったのだが・・・


『今日1番運勢がいいのは山羊やぎ座のあなたでーす』


「ちょっとー、どうして双子座じゃあないのよー!」

「姉さん!占いに八つ当たりしないで下さーい」


『・・・感動するような贈り物を貰える、まさにスーパーハッピーデーになるでしょう!』


「山羊座ばかりエコ贔屓するなあ!」

「占いした人に文句言ってくださーい。テレビに文句を言っても始まらないです!」


『・・・2位の双子座さんは決断の日です!今日の決断は長い目で見たら最良の結果をもたらすでしょう。ラッキーアイテムは烏龍茶ウーロンチャです』


「雄介!明日からもこのチャンネルのままよ!」

「はいはい、そうして下さい」

「ああーーーーー!」

「姉さん、いきなり大声を出さないで下さい!」

「お茶を飲むなあ!」

「はあ!?まさかとは思いますが、たまごかけごはんと味噌汁なのに、烏龍茶ウーロンチャを飲めとは言わないでしょ!?」

「当たり前よ!冷蔵庫にヨントリーの烏龍茶のペットボトルが入ってるから、それを飲みなさい!」

「そんなアホな事を言わないで下さい!和食にはお茶が一番合うんですからあ」

「自分から運勢を下げるような事をするなあ!」

「本気で言ってるんですかあ?」

「当たり前のことを質問しないの!お姉ちゃんの言う事に従いなさーい!!」

「それじゃあ、は、姉さんは一人だけ烏龍茶にして下さいね」

「うっ・・・し、仕方ないから学校は例外とします!とにかく、今日はうちの中では烏龍茶以外は禁止よ!」

「勘弁して下さいよお」

「お姉ちゃんの言葉は女神様の神託よ!」


 結局・・・僕は姉さんの言う事には逆らえず、たまごかけごはんにも関わらず烏龍茶を飲む事になった。とほほ・・・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る