SS 雀荘永谷
第37話 どっちを選ぶのが正解?
「・・・雄介、悪い事は言わないから方広寺さんに決めろ」
「阿良々木、僕はまだ何も言ってないぞ!」
「いや、これは2年A組男子の総意だと言っておく!」
「勘弁してくれよお」
ここは雀荘永谷。
当たり前だがメンバーはいつもの4人だけど、今の並びは右から美咲さん、翔真、阿良々木の順だ。
最初の
僕は何が何でもこの親で取り返したくて、
「・・・A組男子の総意とか言ってるけど、翔真もそう思ってるのかあ?」
僕は『
「俺は別に愛美さん一筋だから、お前がどっちを選ぼうが構わないけど、クラスの連中がこぞって方広寺さんを推している以上、あえて龍潭寺さんを推すのはクラスの結束を乱すと思ってなあ」
「勘弁してくれー」
「クラスの連中にとってはクォーター美少女をお前に取られて、愛美さんと龍潭寺さんの『両手に花』状態になるのを阻止したいという、ある意味、自分勝手な意見なのは見え見えなのだが、あの杉原だけが中立を宣言していて他の連中は全員が方広寺さんを推しているとなると、俺だけが『龍潭寺さんにしろ』とも言えないからなあ」
「しょうまー、お前も僕の敵に回るのかあ?」
「元はといえば、雄介がハッキリと方広寺さんに『ダメです!』と言わないのが原因なんだろ?」
「そ、それはそうだけど・・・」
「まあ、お前の苦しい立場は俺も理解しているつもりだぞ。方広寺さんもロリ顔ロリっ子で結構可愛い子の部類だ。あえて名前を言わないけど、A組の男の中にも「雄介にくれてやるのは勿体ない位だけど龍潭寺さんを取られるよりはマシ」とか言ってる奴が何人もいるくらいの可愛い子だ。お前が幼馴染の龍潭寺さんを取って方広寺さんを蹴れば、その瞬間、『
「分かってるなら、少しは同情してくれよお」
僕は翔真にブーブー文句を言ったけど、翔真はそれを無視して最初のツモをしたが、それを入れて自分の手牌から『
その阿良々木はニヤリとしながらツモをしたが、そのまま考え込んだ。
「・・・オレ個人としては手が悪いから流局にしてもいいんだけどなー。でもー、今日の流れから言えば流局しない方がいいと思うけどー」
そう言って阿良々木は僕を覗き込んでるけど、明らかに僕を揶揄っているのが見え見えだ、チクショー!
その阿良々木は裏向きにしたまま2枚の牌を出した。
「・・・クラスの男子の総意として方広寺さんを取るのが正解なのか、それともクラスの男子の総意を無視して龍潭寺さんを取るのが正解なのか、ある意味、運試しだな」
阿良々木はそう言って僕に「さあ、どっちを取るか選べ!」と催促している。
美咲さんはそれを見ながら「人気者は辛いわねー」とか言ってニコニコしているほどだ。
「・・・美咲さーん、女子の間では話題になってるのー?」
僕はどっちの牌を取ればいいのか迷っていたから美咲さんに話を振ったけど、その美咲さんはニコニコ顔のまま
「あったり前でしょ!女子の間では賭けが行われてる位よ!」
「「「うっそー!」」」
男3人は思わずハモッてしまったけど、美咲さんはニコニコ顔のまま話を続けた。
「さすがに龍潭寺さん本人と愛美さんには失礼だと思って確認は取ってないけど、わたし以外の女子18人の意見は3つに割れたわよー」
「「「3つ?」」」
「そう、3つ」
おいおいー、2つに割れたなら分かるけど、3つに割れたとはどういう意味だあ?僕にはサッパリ分かりませーん。それは翔真や阿良々木も同じようで、互いに首を傾げている。
「ズバリ!女子の意見は方広寺さんが8人、龍潭寺さんが8人で互角よ!」
美咲さんはニコニコ顔で僕に覗き込むようにして言ったけど、ここで僕は『あれっ?』と思った。姉さんと綾香ちゃん、それに美咲さんを除いた女子の数は18人だ。でも、8人ずつだから計算が合わないぞ!?
「・・・美咲さーん、計算が合わないよー」
「仕方ないでしょ?『方広寺さんでも龍潭寺さんでもない人を選ぶ』という人が2人いるんだからー」
「「「マジ!?」」」
「そうよー。誰なのか知りたい?」
「「「知りたい、知りたい!」」」
僕たち男3人は一斉に首を縦に振ったけど、美咲さんは「言おうかなあ、やめようかなあ」と思わせぶりのセリフを言いながらニヤニヤしているほどだ。
「美咲さあん!」
「わりーわりー、じゃあ、正直に言うけど、香澄さんと朝倉さんだよー」
僕は美咲さんの意外な答えに頭が混乱した。朝倉さんはクラス委員という立場から、あえてどちらも推さないという考えが出来る。まさかとは思うが、僕と寄りを戻したいから綾香ちゃんでも方広寺さんでもないというのは都合が良過ぎる。でも、なぜ香澄さんまでが第三者なんだあ?まさかとは思うけど、香澄さんは『姉さんを選べ』などという寝言を言わないですよねえ・・・
「・・・因みにー、わたしは龍潭寺さんだから龍潭寺さんの方が1票多くなるわよー」
「永谷!貴様は男子の敵だあ!」
「そんな事ないわよー。雄介くーん、わたしに感謝してよねー」
「雄介!裏切り者の永谷には天罰あるのみ!」
「天罰とは言い過ぎです!だからあ、わたしの満貫お願いねー」
「雄介!永谷ではなくオレの満貫を一発で振り込め!」
「阿良々木くーん、そんな事を言ってる暇があったらサッサとカノジョを作りなさーい」
「うっせー!俺は北条先輩一筋、他に興味は無い!」
「はいはい、その話は耳にタコ」
そう言いつつも美咲さんは「早く選びなさいよー」と僕に催促してくる。
僕は自分から見て右側にしようと思ったけど、それを掴む直前に躊躇して手を戻してしまった。やっぱり、僕自身にも迷いがあるのかなあ・・・
「雄介くーん、右を選ぼうとしたという事は、自分の右の席が龍潭寺さんだからかなあ」
「それは違う!雄介は方広寺さんがいつも自分の右側を歩くから方広寺さんを選ぼうとした!」
美咲さんと阿良々木はキャンキャン言いながら「右を取れ」「左を取れ」「そっちは龍潭寺さんだ」「そっちが方広寺さんだ」と半ば揶揄い気味に僕を催促している。そんな二人を見て翔真はニヤニヤしたまま僕を見ている。
「えーい!僕は決めた!」
そう言って僕は初志貫徹で右側の牌を取った!
その結果は・・・
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