お似合い(?)の二人

第24話 お姉ちゃんの買い物に弟がついてくるのは日本国民にとって常識です!

“トントン”


(シーン・・・)


“トントン”


(シーン・・・)


“ガチャリ”


「おーい、雄介ゆうすけ、おはよー」

「・・・・・ (雄介君、熟睡中です)」

「ゆーすけー、早く起きないとお姉ちゃんは怒るわよー」

「・・・・・ (雄介君、まだまだ熟睡中です)」

「お姉ちゃんは白雪姫の眠りを覚ます王子様になっちゃうわよー。それでもいいのー?」

「・・・・・ (雄介君、今でも熟睡中です)」

「確定!お目覚めのキッスでーす!!」


”パチリッ”


「ちょ、ちょっとー、いきなり目を覚まさないでよー」

「ね、姉さん!何をするつもりだったんですかあ!!」

「あらー、あまりにも雄介の寝顔が可愛いからチュッチュしてあげようと思ったんだけどなー」

「だから急に寒気に襲われたのか・・・」

「えー、熱い接吻をしてあげようと思ったのに、それはないでしょー」

「冗談じゃあありません!僕と姉さんはきょうだいです!」

「雄介!『お姉ちゃんは弟にお目覚めのキスをしてはならない』という法律は日本には存在しません!」

「はあああーーー・・・どうせ『暖簾のれんに腕押し』『馬の耳に念仏』でしょうから諦めます。僕も起きますから早くどいて下さい」

「えーっ!折角だからー、一緒にお布団の中でお喋りしようよー」

「姉さん!この小説はR18指定ではありません!読者に変な誤解を与えるようなことはやめて下さい!」

「ゆーすけー、R18とか読者とか、何の事なのー?」

「そ、それは・・・とーにーかーく、今日は学校も休みですから、こんな時間に起こす必要はないですよねえ?」

「ノンノン!今日は『たれすぎぱんだ』の新グッズが出る日よー」

「勘弁して下さいよお。まさかとは思うけど、僕も一緒に買いに行けとは言わないでしょ?」

「お姉ちゃんの買い物に弟がついてくるのは日本国民にとって常識です!」

「『弟は姉の買い物の付き合う義務がある』などという法律はないですー」

「昔から『姉孝行したいときに姉はいない』というでしょ?後で後悔しない為にもお姉ちゃんのいう事には素直に『ハイ』と言っておくものよー」

「『親孝行』の間違いだろ?」

「お姉ちゃんの言葉は女神様の御神託よー」

「はあああーーー・・・分かりましたよ、行きますよ、行きます」

「分かってるなら、さっさと起きなさい。開店したら速攻買って、そのままマイスドに行くわよ!これなら『リング・デ・ポン』も絶対に買えるわ!!」

「はいはい、どーせ僕に選択権は無いんだから、姉さんの好きにしてください」

「雄介、何か言った?」

「いえ、別に・・・」


 今日は土曜日。

 美樹ネエが小学生の時に半日登校から隔週休みになり、今は完全週休2日になった事で学校は休みだ。

 だけど『元祖・やきとり弁当』は創業から40年以上も休みは日曜日のみ。その理由は、どの企業も創業当時は半ドン(作者注釈:午前のみ仕事で午後は休み)どころか日曜日のみ休みで、それ以外の6日間は普通に夕方まで仕事なのが当たり前の時代だったからだ。

 その名残で『元祖・やきとり弁当』は今でも土曜日は営業日だけど、さすがに平日ほどの売り上げはない。美樹ネエは毎週土曜日は必ず休みだけど、それ以外にも一人、誰かが休んでいても問題ない程度の売り上げだ。ただ、その代わり美樹ネエ以外の人は平日のどこかで休みを取る事で形の上では週休二日の勤務になっている。

 もっとも、爺ちゃんや父さんの休日は『有って無いようなもの』だ。


 そんな訳で、土曜日と日曜日は特別な行事がある時を除いて寝過ごす事が出来る日でもある・・・のだが・・・姉さんは僕に寝過ごす事を許してくれないのだあ!


「「いってきまーす」」


 結局、あーだこーだ言いながらも僕は姉さんに連れ出される形で赤電に乗ってトーテツ百貨店へ行った。

『たれすぎぱんだ』に加えて、先月には同じヨンエックスのゆるキャラ『こげすぎパン』の新商品が出ているから、10時の開店に合わせてトーテツ百貨店に行ったのだ。

 僕は姉さんがアッサリ買い物を終わらせると思っていたのだが・・・何を思ったのか『たれすぎぱんだ』だけでなく『こげすぎパン』のクッションを前にして店員さんと長々話し込んでいた割には千円ちょっとの買い物しかしなかったのだから、店員さんから見たら、さぞや迷惑なお客さんだったろう。姉さんにから言わせれば普通なのかもしれないけど、僕がそれを言ったところで改めるとは思えないから黙ってます、はい。

 想像できるとは思うけど、土曜日の12時前後に浜砂の中心街のマイスドに行けば・・・混んでいるのは当たり前なのだあ!

 ここはトレーとトングを持ってセルフで好きなドーナツを取ってからレジに並ぶのだが・・・とある商品の前に長蛇の列が出来ていて全然進まないから、誰もが「まだか、まだか」とイライラしているのが丸分かりだ!

 しかも、混雑を助長するような事がまたまた起きた!

「あー!またリング・デ・ポンが品切れよー」

「うわっ、本当だ・・・」

「リング・デ・ポンを欲しがっている人がリング・デ・ポン待ちするから、どんどん列が長くなるじゃあないの!」

「仕方ないですよー、だってリング・デ・ポンの人気は発売以来凄まじいみたいですからねー」

「それは分かってるけどさあ、先週だって本当はリング・デ・ポンが欲しかったのよー!せーっかく雄介が買ってきてくれたのにー、仕方ないから三つ子に譲ったんだけど、そうでなかったら絶対にリング・デ・ポンにしたわよ!」

「姉さんが何も言ってなかったから適当に買ってきたんです!僕に文句を言われても困りますー」

「くっそー、『リング・デ・ポンとオールファッションだけにしろ!』って言っておくべきだった!!」

「勘弁して下さいよお。それじゃあ幼稚園児と同じですよー」

「はいはい、幼稚園児が『リング・デ・ポンが食べたい』とか言ったら譲ってあげる位の大らかさでないと駄目でしたね」

「分かってるならグタグダ言わないで下さいよお」

 そう、今年になって発売された新商品『リング・デ・ポン』は『リング・デ・ライオン』なるキャラまで作ってCM展開しているけど、こういう週末の昼時は品切れになる事も珍しくないほどの爆発的ヒット商品になってしまったのだから姉さんがボヤくのも無理ない・・・

「はあああーーー・・・どうでもいいけど、もう10分以上、ほとんど列が進んでないように思えるんだけどー」

「それは姉さんの言う通りですねー。やっぱり市内で一番混んでるという噂は伊達じゃあないですねー」

「やっぱり浜砂駅の駅ビルにすべきだったのよ!雄介があーだこーだ言った結果がこれよ!責任取りなさい!!」

「・・・(あそこのマイスドだけは僕は勘弁して欲しいですー)・・・」

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