第7話 桜高のオードリー・ヘプバーン
いきなり
「あ、姉貴かよ!」
「はいはい、翔真も
「「だってさあ、こいつが・・・」」
「二人とも、いい加減にしなさい!!」
そう言って『姉貴』と呼ばれた人物は翔真と南城さんに向かってどデカい雷を落としたから、二人ともさっきまでの威勢のよさはどこへ行ったのやら『シュン』となってしまった。
「・・・だいたいさあ、
「「すみません・・・」」
「こうやって説教するのが時間の無駄だってことをいい加減に学習しなさい!!」「「すみません・・・」」
やれやれー、風紀委員会も生徒指導室も手を煩わせることなく一件落着になったけど、この二人の口論(?)を収めるのは、いつもこの人しかいないと言っても過言ではないなあ。
翔真が『姉貴』というからには翔真の姉だ。赤色リボンとしているという事は僕や姉さんと同じ学年・・・つまり、翔真も僕と同じで双子の弟なのだ。この人の名前は平山(翔真が平山姓なのだから当たり前だ!)
香澄さんと翔真は超人気弁護士事務所『平山弁護士事務所』の社長の息子の長男と長女。つまり翔真は弁護士事務所の3代目だ。
翔真が学年総合1位なのに対し、その姉の香澄さんは学年総合成績2位という事は女子1位!双子の姉弟で男女の学年1位を独占しているというのだから、凄まじいの一言に尽きる!!
しかも姉さんが『桜高のヴィーナス』ならば、香澄さんは『桜高のオードリー・ヘプバーン』と呼ばれるほどの子で、去年は桜高の1年生男子の人気を姉さんと二分したほどだ。本物のオードリー・ヘプバーンのウェストは51cmだったと言われてるけど、香澄さんのウェストも信じられないくらいに細い!まさに才色兼備という言葉は香澄さんの為にある言葉だ!!
えっ?姉さんも才色兼備?
あのー・・・姉さんが可愛くて女子2位なのは間違いないですけど・・・僕から言わせれば香澄さんこそ才色兼備という言葉がピッタリであり、姉さんは頭のネジが数本飛んでいるように思えるんですけどお・・・
ま、まあ、その議論をしてるほど暇じゃあないから今はやめておくけど、とにかく香澄さんの普段の言動は『お嬢様』というよりは『お
超人気弁護士事務所の3代目姉弟に比べて、うちは弁当屋の3代目姉弟。同じ苗字、同じ双子の姉弟、同じ3代目でも弟の格が違い過ぎるぞ!そんな弁護士一家の3代目がどうして姉さんに拘ってるのか・・・今は省略します、ハイ。
「・・・佳乃さんもさあ、こーんな事ばかりやってるからカレシに逃げられるっていうのをいい加減に自覚しなさいよー」
「えーっ、だってさあ、こいつが全部悪いんだよー。わたしは悪くないです!こっちが責任取って欲しいくらいです!!」
「わたしの苦労も考えてよー。後でフォローするのも大変なんだからさあ、さすがのわたしも次はフォローしたくないよー」
「香澄さんには申し訳ないと思ってますけど、こいつには黙っていても女がホイホイと寄って来るっていうのに、わたしには誰も寄ってこないというのは絶対におかしいです!」
そう言うと南城さんは翔真にビシッと右手の人差し指を突き出したから、翔真は「何だとー!」と言って食って掛かろうとしたけど、香澄さんが「いい加減にしなさい!」と言って再び二人に雷を落としたから南城さんも翔真もシュンとしてしまい、僕も姉さんも思わず『ぷっ!』と噴き出してしまったほどだ。
「・・・とーにーかーく、これ以上喧嘩するようなら翔真にも佳乃さんにも『世にも恐ろしい事』を本気でやってもらうから覚悟しておきなさい!!」
「「そ、それだけは勘弁してください・・・」」
「それが嫌なら、大人しくしてなさい!」
「「はーい・・・」」
香澄さんはそう言うと翔真の左耳を掴んで「行くわよ!」とか言って引っ張って行ったから翔真も「わーかったからー」とかブーブー言いながら香澄さんについて行った。南城さんはあっかんべえをやりながら翔真に『あっちへ行け!』とばかりに手をシッシと振ったけど、その仕草はまるで幼稚園児だよなあ。
そんな南城さんを放っておいて僕と姉さんは歩き出した。でも、僕も姉さんも登校して教室へ入る前にやらなければならない事がある。
それは・・・2年生はクラス替えがあるのだ!だから、自分たちがどのクラスなのかを確認しないと教室へ入るどころか靴を履き替える事も出来ないのだ。3年生はクラス替えが無いから登校したら普通に教室へ向かえるが、2年生は生徒昇降口に掲示してあるクラス名簿を見る必要があるから、その前には大勢の人だかりが出来ている。
その人だかりを掻き分けるようにして僕と姉さんは前に進んで、自分の名前がどこにあるのかを探した。まあ、桜岡高校は8クラスあるけど、2年生からは志望する大学の学部や専門学校別、センター試験の選択科目別にクラス分けされる事が分かっているし、どの進路先はどのクラスになるかも毎年同じだから、僕の場合、A組かB組・・・
だが、僕も姉さんもクラス名簿に書かれた名前を見て、困惑の表情を隠せなかった。
なぜならば・・・
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