第8話 まさかの展開!

 今、僕は教室で自分の席に座っている。


 今日は2年生最初の登校日だから、窓際の一番前から出席番号順に並んでいる。

 僕は2年A組の出席番号35番だった。あくまで1年生の段階での第一志望、それもセンター試験の選択教科から割り振られたクラス分けだけど、必ずしも全員が志望した大学を受験する保証はない。半数以上は実際の受験の時には志望校を変えているというのは僕も聞いた事がある。

 2年A組は42人だから各列7人だ。だから僕は最後方だ。

 出席番号34番、僕の前の席には姉さんが座っている。僕と同じクラスになるのは、幼稚園の時を含めて初めてだ!

 というより、僕は幼稚園・小学校・中学校・高校と姉さんと同じ学校だけど、同学年のきょうだいは別クラスというがあるから、今までは別クラスだったけど、我が桜岡高校の2年生は各人の進路別のクラス分けになってるから、初めて同じクラスになった。同じ平山ひらやま姓だけど、姉さんは『め』で僕は『ゆ』だから、当然姉さんの後ろになる。


 でも・・・僕も姉さんも掲示されていたクラス分けの表を見て唖然とした。


 なにしろA組の出席番号1番は朝倉あさくらさん!

 まさか朝倉さんが同じクラスにいるとは・・・しかも昨日の今日である。朝倉さんも明らかに意識過剰になっていて、ぎこちない挨拶しか出来なかった。これじゃあ逆にクラスの連中から怪しまれるぞ!

 姉さんの前、出席番号33番は同じく平山姓の翔真。当然だけどその前の出席番号32番は香澄さん。という事は、僕たち姉弟は出席番号でも、もう1組の平山姉弟の下にいる訳だ。まあ、こればかりは努力でどうにかなる問題ではない。

 ただ、翔真は『フン!』とばかりに右を向いて不機嫌を隠さない。その理由はズバリ、翔真の左、出席番号26番は南城さん!!まさに犬猿の仲、水と油の関係の二人が隣同士になったのだから南城さんの不機嫌さも半端ではないのだが、当然だけど香澄さんが前にいるから表立って怒鳴り合ってない。けど、互いに腹の内は相当煮えくり返っているはずだ。

 同じクラスになったという事は、もう1組の平山姉弟も朝倉さんも南城さんも1年生の段階では似たような進路、同じ選択教科だったという事になる。翔真は昨年の総合成績ナンバー1、というか体育以外の全教科で1位という凄まじい成績で、体育だって中学の時はサッカー部に所属していて(本人が言うにはDFディフェンダーだったけど、一度もレギュラーを取れず、練習試合に2、3回、途中出場しただけだったらしいから、高校ではサッカー部を選ばなかったようだ)決して知能だけの奴ではなくて1年H組でも運動部所属の男子と遜色ない動きをしていた程だ。他にも裁縫さいほうの腕はクラスの誰よりも上手で家庭科教師も脱帽してたし、彫刻に至っては美術部員も真っ青になるくらいの出来栄えだ。そんなスーパーマンのような翔真がA組なのは納得できるけど、まさか南城さんも同じとは思わなかった。もっとも、南城さんの1年生の時の成績はお世辞にも立派といえないのは本人も認めてたから、結構高望みの第一志望だと言えるなあ。

 だが、それ以上に驚いた事があるのだ!!


 朝のショートホームルーム、始業式は終わって今はロングホームの時間だ。


 僕の右側、出席番号42番の席には誰も座ってない。


 というより、ショートホームルームも始業式も参加してない・・・のではなく、『わざと教室に来てない』が正しい。

 それに、ショートホームルームには来ていたクラス担任もまだ来てない・・・


「・・・おい、聞いたか?」

「ああ、オレも聞いたぞ」

「わたしも聞いたよー」

「なーんか、物凄く可愛いらしいわよ。」

「うっそー!それって初耳よ」

「おーい、それって本当か!?」

「ホントに偶然だけど、先生に連れられて校長室に入っていくところを見た子の話よー」

「まあ、わたしも直接見た訳じゃあないからね。でも、他のクラスでも結構話題になってるみたい」

「まあ、オレとしてはどっちでもいいけどなー」

「しかもさあ、ガイジンさんみたいだって聞いたよ」

「マジかよ!あ、でも名前は日本人っぽいから、もしかしてハーフ?」

「わたしはハーフでも外国の人でも構わないわよー」

「オレもハーフでも外国人でもいいから、お近づきになりたいなー」

「あんたさあ、自分の顔を見てから話をしなさいよー」

「うるさい!彼氏いない歴イコール年齢のお前に言われたくない!」

「フン!モテない男のひがみに付き合いきれないわよ!!」

「ちょっとー、新学期早々喧嘩けんかはやめなさいよー」

「そうだぞー」

「「へいへい、気を付けまーす」」


 既にチャイムが鳴ったにも関わらず担任がまだ来てないから、隣や前後の連中と話し込んでる連中もいるが、一応全員が座っている。


 そう、出席番号42番の生徒は転入生なのだ!!!


「やあ、みんなー、お待たせー」


 そう言って開けっ放しになっていた前側の入り口ドアからスーツ姿の女性が現れた。昨年の1年F組の担任、今年は僕たち2年A組の担任の飯田いいだ先生だ。

 結構、いや間違いなく美人の部類なのだが申し訳ないが胸はペッタンコという、ちょっと残念な先生だ。一応、僕は本当の年齢を知っているけど30歳前後とだけ言っておく。この学校の生徒の共通認識である。因みに担当教科は日本史だ。

 だが飯田先生に続いて入ってきた転入生を見た途端、男子は一斉に『うぉー!』と歓声を上げ、女子は一斉に『ほーー!』と感嘆の声を上げた!その生徒は桜岡高校のブレザーにスカートを履いた女子生徒だ。

 顔と髪、その身長だけを見れば、誰もが「超イケメン!」と答えるほどの男だ!けど、緩やかだけど胸の膨らみは紛れもなく女子!体の線の細さ、スラリとした長い手足、信じられないくらいに高い腰の位置、輝くような栗色の髪はパリ・コレクションやミラノ・コレクションに登場するファッションモデルのようだ!


 そう、まさかの展開で龍潭寺りょうたんじ綾香あやかちゃんは僕や姉さんと同じ2年A組なのだあ!!!

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