第9話 聖域なき構造改革(?)
しかも、僕も姉さんも思わず一緒になって歓声を上げたほどだ。それくらいに桜高の制服を着た
その綾香ちゃんがニコッとした瞬間、『ウォーーーーーー!!!』と男子から一段とヒートアップした歓声がして、女子からも『キャーーーーー!!!!』と黄色い歓声が上がった!!
「おーい!他のクラスの迷惑になるから静かにしろー!」
「あー、クラス名簿が掲示されてるから名前は既にみんなも知ってると思うが、改めて転入生を紹介する!
飯田先生はそう言って左の掌を上にしながら綾香ちゃんを紹介したが、その途端にA組の連中から一斉に『ウォーーーーー!!!』という歓声と共に割れんばかりの拍手が起きた。まあ、僕も姉さんも例外に漏れず一緒になって騒いでたけど。
「はじめまして!龍潭寺 綾香です。浜砂市の出身で、父の仕事の関係で札幌に4年、その後は
綾香ちゃんはそう言って軽く頭を下げたけど、その瞬間、再びクラス中から歓声が上がったのは言うまでもない!
「おい、
「しかもボクッ子だあ!」
「最高!」
またまたクラスの連中がキャーキャーと騒ぎ出したけど、その時に「質問がありまーす!」と言って一人の女子が手を上げた。おいおい、
「あのー、龍潭寺さんに聞きたいのですが、もしかしてハーフですかあ?」
「ううん、違うよ。ボクのお母さんのお父さんが
「「「「「「「「「「クオーター!」」」」」」」」」
綾香ちゃんの『クオーター』という発言に再び教室中の連中がキャーキャーと歓声を上げている。勿論質問した南城さんも手を叩きながキャーキャー言ってるし、この時ばかりは隣の
「おーい、お前らー!ハーフでもクオーターでもいいけど他のクラスの迷惑になるから、いい加減にしろー!」
飯田先生はぶっきら棒に言い放つと綾香ちゃんに席に座るよう促したから、様々な反応を示すクラスの連中を尻目に綾香ちゃんは自分に与えられた席、つまり僕の右側にまで来たけど、全員の視線は綾香ちゃんに集中したままだ。その綾香ちゃんは座席に座る直前、僕の方を向いてニコッと微笑んだ。
「ユーちゃん、よろしくね」
そう言って綾香ちゃんは座ったけど、クラスの男子連中は一斉に怒号を上げた!
「おい
「しかも『ユーちゃん』とはどういう意味だあ!」
「お姉さんに続いて転入生とも知り合いだとは不届き千万だあ!」
「日本の恥!」
「オレと席を替われ!」
「雄介!貴様はそこに座る権利はなーい!」
おいおい、何で僕がお前らからブーブー言われる必要があるんだあ?しかも僕と綾香ちゃんが隣り合わせの席に座るのはホントに偶然だ。意図して僕の隣に座らせる事が出来る訳ないだろー!
ようやく教室内が静かになったところで、飯田先生が喋り出した。
「あー、去年の1年E組からH組だった連中は先生の授業があったから知ってるとは思うけど、A組からD組の授業は受け持ってなかったから、この場で改めて言っておくぞー」
そう言うと飯田先生はニヤッとしたから、僕は内心「おいおい、あの話をイキナリするつもりなのかあ!?」と危惧したけど、それは10秒もしないうちに現実になった!
「いいかあ、これだけは言っておく!この飯田
はーーーー・・・いきなりこれは無いだろー。
D組だった朝倉さんを始め、去年A組からD組だった連中は口をぽかーんと開けてるし、それは綾香ちゃんも同じだ。姉さんや南城さん、それに香澄さんも翔真も、去年は飯田先生の授業を受けている連中は全員が笑いを堪えるのに必死だ。その証拠に姉さんの肩が小刻みに揺れている。僕から言わせればタイガースこそ聖域だけど、それを飯田先生の前で言うと有無を言わさず生徒指導室へ連れていかれるから黙っていることにします、ハイ。
「先生はタイガースをこよなく愛し、タイガースのリーグ優勝、いや、悲願の日本一の為にはどんな苦労をも
そう、この飯田先生は熱狂的なタイガースファンで、職員室の自分の机の上には常にタイガースのメガホンが置いてあるし、机の引き出しには携帯用ラジオとイヤホンまで入ってるのだ。去年の夏休みには本当に甲子園球場へ行って、タイガースの選手がホームランを打った時に熱狂したシーンがテレビの全国放送で流れた程だ。しかもタイガースが勝った翌日の授業は物凄く活舌で上機嫌なのに、負けた日の翌日はぶっきら棒もいいところだし、連敗中は些細な事で超不機嫌になる事でも有名なのだ。
そんな飯田先生のあだ名は『奈緒
えっ?だから今でも独身なのかって?まあ、そこは・・・僕の口からは言えません、ハイ。
作者注釈:
綾香の母親は、アイルランド系アメリカ人の父(綾香から見たら祖父)と日本人の母(綾香から見たら祖母)の間に生まれた
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