第4話 TKGはラッキーアイテム
「姉さーん、
「あいよー」
僕は姉さんから醤油を受け取ると、茶碗に生玉子を割って、そこに醤油を掛けてから掻き混ぜた。人によってはご飯の上に生玉子を直接乗せて、そこに醤油を掛けてから掻き混ぜるというのも有りだが、我が家では全員が茶碗で割る派だ。
でも、ここには僕と姉さんしかいない。
それは、朝早くから仕込み作業、つまり『ネギま』と『つくね』、秘伝のタレを作っているからだ。だから父さんたちは既に食べ終えて店の奥で奮闘中だ。それをやらないのは日曜日だけだから、日曜以外は僕と姉さんだけの朝食というのも珍しくない。母さんが用意した物を食べる時もあるけど、僕が知ってる限り、上の姉さんが高校卒業を機に家を出た7年前からは姉さんがやっている。
今日も姉さんが作った朝食だ。
そんな僕は姉さんから受け取った醤油を再び姉さんに戻したが・・・
「あれ?いつの間に薄口醤油に変えたんだあ?」
「あんたさあ、忘れた?御歳暮で調味料セットを貰ったけど全然使ってなかったから、丁度醤油が切れたから使う事にしたって、お母さんが言ってたよー」
「マジかよ!?いつの話?」
「昨日の夕方だよー」
「ごめん、僕、全然聞いてなかった」
「あんたさあ、テレビ見ながら食べてたから『右から左』だったとしか思えないよー」
「この場合、『左から右』が正しいと思うけど・・・」
「山田くーん!
「姉さん!こんな所で〇点の真似をしなくてもいい!だいたい山田君どころか座布団はどこにあるんだあ?」
「それじゃあ、クッションを○ッシュート!」
「それも某テレビ番組の真似!」
「はいはい、ツッコミありがとう!」
姉さんはそう言うと、本当に僕の頭をナデナデしています。えっ?え、えっ!?あのー、これでも僕は高校2年生なんですけどお・・・
「僕は幼稚園児ですか!?」
「はいはーい、雄介は可愛いからお姉ちゃんが御褒美にナデナデしてるんだよー」
「
「雄介も耕平もお姉ちゃんからみたら可愛い弟みたいなものよー」
「はいはい、僕は弟でーす」
おいおい、殆ど定例行事になってるけど、こんな
そう思いつつ、僕は薄口醤油を入れた生玉子をご飯に掛けてからグルグルと掻き混ぜて、そのまま一口・・・あれ?何となくだが薄いぞ。薄口醤油だから普段と同じだけ入れても薄く感じるのかなあ。
僕はそう思って、薄口醤油をそのままご飯の上に直接掛けようとしたけど、その瞬間、姉さんが『ワーーッ!』と叫んだ!
「ちょ、ちょっと姉さん!何を騒いでるですか!?」
「あんたさあ、醤油を使い過ぎよ!」
「へ?・・・だってー、これって薄口醤油だけあって、全然醤油の味がしないぞ!」
「あんたさあ、薄口醤油は普通の醤油より塩分が高いのを知ってるの?」
「マジ!?」
「あっきれたあ。それ、ホントの話だよ。嘘だと思うなら、ここの成分表を見なさいよー」
そう言うと姉さんはボトルの側面にある成分表を指差したけど、僕はそれを見て「うわっ!ホントだあ!」と叫んでしまった。
「はーー・・・ゆーすけー、薄口醤油は透明感があって見た目が
「へえー、勉強になりましたー」
「ふふーん、学年ナンバー1才女に任せなさーい」
「もう一人の平山の間違いだろ? (ボソッ)」
「雄介、何か言った?」
「いえ、別に」
はーーー・・・どうせ僕は全てにおいて姉さんに勝てませんよーだ。絶対に勝てるとしたら腕相撲位ですけどね。それと・・・ま、これは秘密。
そんな僕はTKGを箸で口に流し込みながらテレビの情報番組を見ているけど、毎朝恒例の占いコーナーの時間に変わった。
『今日もっとも運勢のいい星座は双子座のあなたでーす』
「おー、今日はラッキーだね」
「そうだねー。春休み中は下の方ばかりだったから、ホントに久しぶりの1位だあ!」
「お姉ちゃん、テンション上がりました!」
『昨日の願い事が今日、現実となって目の前に現れます』
「うわっ、まさに夢のような日じゃあないの!」
「そうですねー」
「あー!ひょっとして、セブンシックスの『モーニングお嬢様。』限定コラボ商品が当たるかも!!」
「姉さーん、夢がセコイですー」
「ゆーすけー、何か言った?」
「いえ、別に・・・」
『そんな双子座さんの運勢をもっと上げるラッキーアイテムは
「
「山田さん、いつも玉子をありがとう!」
「おーい、山田くーん。山田さんに座布団10枚!」
「姉さん!山田さんと山田くんをゴチャ混ぜにしないで下さい!」
「気にしない、気にしない!」
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