僕の理想の・・・

第3話 お姉ちゃんダーイブ!

“トントン”


(シーン・・・)


“トントン”


(シーン・・・)


“ガチャリ”


「おーい、雄介ゆうすけ、おはよー」

「・・・・・ (雄介君、熟睡中です)」

「ゆーすけー、早く起きないとお姉ちゃんは怒るわよー」

「・・・・・ (雄介君、まだまだ熟睡中です)」

「お姉ちゃんダーイブ!」


 ダダダダダッ!ドサッ!


「どわーーーー!」

「おっはよう!!」


 僕は夢世界から無理矢理現実に引き戻された!しかも姉さんによって!!

「ゆーすけー、全然起きないからお姉ちゃんが起こしちゃいましたー」

「今日は午後からだろ!別に寝過ごしてもいい筈だあ!!」

「ノンノン!お母さんが起こせと言ってまーす」

「だからと言って、これは無いだろ!」

「べっつにー、姉弟きょうだいなんだからいいでしょ?」

「あのねえ」

 僕は姉さんに文句を言ったけど、姉さんに言っても無駄だとは分かっている。これは年中行事みたいになってるのだから。

 今日の姉さんは僕の上にダイブしてきた!掛け布団はいつものクセで床に落ちていて毛布しか掛けてなかったのに僕の胸の上に姉さんがダイブしてきたのだから、髪が喋った拍子に口の中に少し入ってる!!

「姉さーん、重たいよお!」

「うっそー!もうちょっとダイエットしないと駄目かなあ」

「そうじゃあなくて、起きたくても起きられないんだぞ!」

「あー、ゴメンゴメン」

 そう言って姉さんはようやく僕から離れてくれたから僕も起きれたけど、だいたい、姉さんが僕を無理矢理起こすのは年中行事、というか僕が覚えている限り、幼稚園に入る前から姉さんがいる時は毎朝僕を無理矢理起こしている!僕は6時半に目覚まし時計をセットしているのに、それが鳴るよりも早く姉さんが起こすから、目覚まし時計が本来の目的を達するのは姉さんがインフルエンザとかでダウンした時だけだあ!

「・・・早くしなさいよー。今日はたまごかけごはんだよー」

「マジ!?また山田さんが玉子を持って来たのかあ?」

「うん、朝早く持って来たってお母さんが言ってたよ」

「TKGにベーコエッグにオムレツという、例の三点セットじゃあないですよねえ」

「ノンノン!今日はニッポン人の心、和食だよ!!」

「はいはい、わかりました」

「『はい』は1回だけ!」

「はい!分かりました!!」

「よろしい!では、しゅっぱーつ!!」

「アイアイサー!」

 やれやれ、今日も、というより今年度も姉さんペースでスタートかよ、とほほ。


 僕の家は6人家族だ。僕以外は爺ちゃん、婆ちゃん、父さん、母さん、姉さんだ。

 でも、僕の家から歩いて3分もしないところには母さんの両親が住んでるし、耕平の母さん、つまり姉さん夫妻(要するに、上の姉)もここから歩いて5分もしないところに住んでいる。

 僕の家の1階の半分は『元祖・やきとり弁当』という、爺ちゃんが開いた弁当屋だ。父さんはその2代目にあたる。

 メニューは基本的に2種類だ。『ネギま』と『つくね』の串を炭火で焼いた物をアツアツのご飯と板海苔の上に乗せるだけ。味は『タレ』と『塩』だから実際は4種類だ。もっとも『ネギま』と『つくね』をミックスする事も出来るし、串の数を5本まで増やす事とご飯を大盛りにする事も出来るからバリエーションは豊富だ。串だけをバラ買いする事も出来るから、弁当に加えて串を買っていく人も相当いる。創業以来継ぎ足しで使っている秘伝のタレの作り方は企業秘密ではあるが、その『タレ』を注文する人が7割以上なのだ。ご飯に味が染み込んでしまうので『タレ』と『塩』を同時に選べないのだが、例えば『塩』の弁当に串をバラ買いで『タレ』という人も結構いる。

 ただし・・・名前は『やきとり』だけど、鶏肉ではなくなのだ!

 えっ?豚肉なのに『やきとり』はおかしい?詐欺?

 えーとですねえ、全国には鶏肉以外の肉を使った『やきとり』というのは数多くありますから決して詐欺ではありません。北海道や埼玉県の一部地域には『豚肉』の、福岡県の一部地域には『馬肉』の『やきとり』あるし、愛媛県の一部地域には串に刺さない『やきとり』もあります。他にも『内臓』や『もつ』を使った『やきとり』もありますよ。

 ただ、浜砂では『やきとり』と言えば鶏肉だから、逆に豚肉の『やきとり』がウケているのもあり創業から50年近く愛されているのも頷ける(と僕なりに解釈している)。


 そんな僕に父さんと母さんは3代目として期待していると思うけど・・・


 僕には将来、やりたい事がある。それは老舗弁当屋の3代目ではない・・・

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