第32話 ごめん
「──痛い! いたたた……シャル、すまないがもう少し優しく……いた!?」
自分の店に戻るなり、俺はサクラの代わりに受けた傷をシャルに手当てしてもらっていた。
あの時彼女が手心を加えず、刃を振るっていたら間違いなく俺は死んでいただろうな……。
「す、すまへんマサムネ。おもいっきりどついてもうた……大丈夫かいな?」
怪我を負わせた張本人の少女に、涙が浮かぶ。
事情は聞いたものの、何故あんな展開になるのだろうか……。
「マサムネさん、申し訳ありませんでした! 勝手に剣を持ち出してしまって……」
「確かに、褒められたことじゃないな」
俺が触れても何もないのだがな……。しかし、魔剣を握った“戦う者”は今まで例外なく様子がおかしくなっている。
やはり魔剣には、彼女達を魅了し判断を鈍らせる何かがあるのかもな……。
「憶測だが、剣と持ち主が引かれあったのかもしれない。サクラの様子がおかしかったのだろ?」
「はい……
彼女の庇う言葉に「……ありがとう!」っと、サクラはお礼を言いった。
落ち込んだ彼女を見かねたシャルは、サクラの頭を優しく撫でる。
その姿は、まるで姉妹のようだな。
「別に責めるつもりはない。なんにせよ、君達に怪我がなくて良かった」
勘違いやすれ違いで、お互いを傷付け合うのは悲しいからな。
結果的に無事に和解が出来たならよしとしなけれ……。
「──って、痛い!!」
折れていた腕に添え木を当て「男の人なんですから、我慢してください」っと、布でグルグルと縛りつけるシャル。
手当ては嬉しいが、もう少しだけ優しくして──。
「──ところでマサムネさん、聞きたいことがあるんですが」
「あ、あぁ。なんだろうか?」
サクラは俺の様子を伺いながらも、先程剣を交えた少女を指差した。
「──この子は誰なんですか?」
「──こいつらはいったい誰やねん!?」
「──この方はどちら様でしょうか?」
何も一斉に言わなくても……。
俺は頭をかき、双方の紹介する事にした。
「こっちの二人は最近知り合ったサクラとシャルだ、ダンジョンの攻略を目指すルーキーだな。そして彼女の名は【レオナ】察しはついているだろう? 俺が五年前に所属していたパーティー。そのリーダーだ」
「もう五年も立つんか、月日が過ぎるのは早いもんやな……」
目を閉じれば今でも昨日の事の様に思い出す。
感動や笑いあった思い出に、共に泣き、苦難を分かち合った過去
……そしてあの、忌々しい記憶。
予定が随分変わってしまったな、どうやって謝れば良いものか?
俺が物思いに更け、思考を巡らしている時だ。サクラとシャルは口をパクパクと開けていたのだ。
「「…………」」
「どうした、二人とも?」
俺は何かおかしな事を言っただろうか? 二人の表情から察するに、何かに──。
「「──えぇ~~!!」」
……って何故二人そろって驚くだと! 一体何に!?
「──だってこの子、どう見ても私より年下じゃないですか!? 五年前ですよ、ダンジョンが攻略されたのは!?」
あぁ~……そう言う事か。二人はレオナの見た目を見て、その上でありえないと判断したわけだな?
「いや、そうは見えるかもしれないがな? 実は彼女、これでも二十を越えているんだ……」
サクラとシャルは、またもや驚きの声を上げる。
言われても見れば、俺も初めて彼女の年を聞いたときには驚きもしたな。
慣れとは恐ろしいものだ……世の常識を忘れてしまうとは。
「マサムネ、久しぶりにあったっちゅうのに、酷い言いようじゃないやないか!? ウチはな……ウチはその長い間、ずっとあんさんを探してたんやで!!」
「……すまないレオナ、なんて詫びれば言いだろうか? 俺が出来ることなら出来る限りの事をして」
「詫びの言葉なんかいらんわ! もう二度とどっか行ったりすんなや!」
レオナは怒鳴り散らすと、身を震わせながらもその場に座り込んだ。
子供の様に泣きじゃくる彼女の様子を見ていると、俺はいっそ殴られた方が楽だった……そう思わされたのだ。
「本当に……すまない……」
そんなレオナに寄り添い、俺は彼女強く抱き締める。
「ごめん……ごめん」っと何度も繰り返し、彼女が落ち着くまで頭を撫でるのだった。
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